輝かしい高卒ルーキー、達海のデビューから2、3年経っただろうか。俺はそのルーキーに背後から飛びつかれるなんてのは日常茶飯事のように懐かれている。可愛い後輩だから無碍にできないし、何より俺も満更でない。



「達海、お前…」
「あ、後藤さんおかえりー」
寮で暮らしている俺の部屋は達海の第二の部屋のようになっていた。いつの間にかあいつが持ってくる雑誌やらスナック菓子の袋やらがあって、何で俺は甲斐甲斐しくそれを収納する棚まで準備しているんだ。
「ベットに食べかすこぼすなよ。シーツで手を振くな」
「あいあい」
ため息混じりで言ってもなんの効果もないんだ。シャワーから帰ってくるといつも一足早くこいつが寝そべっていて、俺は疲れた体を投げ出す場所もなく、床に座って達海がぐだぐだ喋るのを聞いていた。いつもだ。達海は話の引き出しが多いのか何なのか飽きずに喋っていた。俺も飽きずに聞いていた。
「ねぇ後藤さん」
「なんだ?」
「あのさぁ、俺入り浸ってるけど理由は解ってるんだよね?」
「…は?」
にひひ、とお得意の笑顔をたたえながらこっちをきらきらとした目で見つめてくる後輩に、俺は驚いて息をのんだ。零れ出した間抜けな声の後には沈黙が続けて、達海はその間に笑顔から唇を尖らせていた。
「んだよ鈍感」
「なっ…サッカー選手に鈍感はないだろ」
「だって鈍いんだもーん」
サッカー関係ないし、とぶうぶう文句を垂れ流して、立ち上がってドアを開けて、その背中に隠したものを知りたくて、でも全く俺の体は動かなかった。
「達海、」
「…気づかないから絶対教えてやんねえもん後藤のにぶちん」
俺の動かなかった体に、初めて呼ばれた敬承が抜かれた名字が耳に突き刺さった。
閉まったドアの音からは、達海の意図は感じ取れなかった。ようやく動いた全身を達海の体温の残るベッドに投げ出せば、俺はあいつのイタズラな態度の真意に思いを馳せた。





気づいて欲しいから



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過去ってほんとロマン…!
過去はもういちゃいちゃラブラブだったに違いない!




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