「あ、…もしもし?」
『椿…わはっ』

遠く煌めいて


「暑いね、大阪は?」
『ん、暑い…うん。シムさんぼーっとしてよく平賀さんに怒られるんだ』
受話器から聞こえる声。窪田の笑い声を聞くだけで、ああ窪田だ。と安心した。
「あ、あのね、今日からうちのクラブハウスに笹と短冊置いてあるんだ」
『…七夕?』
「うん。窪田なんか書くことある?おれサッカーのこと書いたんだけど」
勝つ、レギュラーをとる。サッカーに関する願いが沢山書かれた短冊を大量にぶら下げて、クラブハウスでは笹が揺れていた。窪田だったらどんな願いをかくのだろう。ちょっとした好奇心を揺さぶられて、電話をかけた。
『あ、えっと…会いたい、椿に』
「え、ええっ」
『えっと…びっくりした?』
「う、うんだって…」
恥ずかしい、と言うと窪田はわはっと笑った。
窪田に会う時は緩やかに流れる時間を大切にした。だからこそ、また会いたいと距離を疎ましく思う。でも、人は孤独になると愛が深まっていくものだとも思う、なんて感じるのはここ最近になってからだけれど。
『…椿に、会いたいです』
「…うん、」
だから、書いてください。
どきり、どきり。
窪田はいつも俺が困るのを気づいてない。でも俺のこんな悩みは、嬉しい悩みだ。こうして窪田が会いたいなんて。うれしくて仕方ない一言。心拍数が、あがるあがる。
「俺も…会いたいよ」
『…わはっ』
ばくばくと鳴る心臓。どきどきしながら床の自分の足を見つめて、窪田の言葉をまった。間さえも、愛しい。
『天の川』
「え?」
『出たら会えるって気がします…はい』
窪田の一言が心臓を叩いていく。どきどき。やばい。なんだか、心臓が機能しなくなりそうな、錯覚。
「…今度大阪行っていい?」
『うん…わはっ』

織り姫と彦星よりは会える頻度は高い。ごめんなさい、でも嬉しいのは変わらないままです。







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