この宮殿の周囲には大量の水が落ちる壁の様な噴水がある。それはこの町が水の都である
由縁でもあり、ここが水上都市であることの証拠でもある。
水音で思考がかき消された頃、自分より背の高い男が横に立ったのが分かった。

ジェイド=カーティス。死霊使いの異名と実力を兼ね備えた陛下の懐刀。共に旅をした仲間でもある。実際、この人はよくわからない。いつでも飄々とした態度には驚かされるし、何より、この人はルークの元だ。ルークの元であるし、イオン、シンクの元でもある。レプリカの産みの親。俺はずっと思っていた。旦那は、自分の理論が「生きている」ことはどう思うのか。


「こんな所にいましたか、
陛下が貴男を
探してくるようにと
五月蠅いんですよ。
またルークのことを
考えていたんでしょう?」

「なぁ、旦那」

「…なんでしょう?」


「ルークに逢えて…
良かったか?」

人の生血のような、そんな瞳だと初対面で感じたことを思い出した。目を見開いてすぐいつもの凛とした表情に戻す。

「…そうですね。
私はルークに、自分に
足りないものを沢山
貰いました。
貴男だって、そうでしょう?
貴男の場合は私とは違う類いの
愛がありますけど。
何にしろ我々は
ルークのお陰でまた成長した。
違いますか?」

愛。愛がまた俺を縛るのか。家族への愛は俺を復讐へと縛った。じゃあルークへの愛は?俺を何に縛り付ける?

「…こんなに会えないだけで
触れたいとか、思ったの
初めてなんだ。
超振動でタタル渓谷に
消えちまったときも、
寂しかったけど、違うんだ。
…おかしいな、俺。」

虚しさ寂しさ。あいつがいないと悲しくて死んでしまう。


「近いうちに会えますよ。
なにしろ、バチカルの
お屋敷にいるんですから。
ルークも会いたがっていると
解釈しておきましょう。
私も、周りが静かすぎて
具合が悪いです」


「旦那」


「…ルークが
生まれてきてくれて良かった。
私はそう思っていますよ。
さぁ陛下がお呼びです」


「ああ」


ジェイドから出たそれはルークを思い出してか自然に出たような薄く分かりにくい笑顔だった。

「ルークを作ってくれて
嬉しいよ。あいつは
俺の存在全てだから」


俺の世界の中心にあいつが居る限り俺のジェイドへの感謝は
尽きない。復讐から愛情へと
心変わりした今だって。


「貴男がいるからこの世界に
ルークは居られるんですよ。
貴男がルークを信じたから。」








世界に居られる理由

(でも、ほんとに
嬉しかったんだ)


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一度別れてからのガイ。
ジェイドと二人でいたら
こんなこと言ってたらいいな。
成人組好き。
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テーマ「人外ファンタジー」
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