「なんでだろうな」
ふう、とため息をつかれてどうして良いかわからない。わるい癖だ。どうしたって不安は拭えないし、劣等感だって常に感じている。
「なにがですか」
声は震えていないだろうか。少し強めに意識した。自分がつらく怯えているということは絶対にザキさんに知られないように。いつだってそうだ。俺はいつだってザキさんにビビってんな、みたいなそういう禁止の用語を使われていた。だけど、そのあとザキさんはそこが好きだと言う。
いつだってそうだ。でも、その一言で俺は笑っていられた。
でも今日はそうはいかない。疑問で聞かれると、俺はちゃんと答えられないことが多い。それはやっぱり劣等感、不安にさいなまれるから。
まずザキさんが突然主語とか、よくわからないまま聞くから俺は身構えてしまう。言いたいことを分かってほしいのかも知れない。でも、まだ無理です。ザキさん。俺にはまだあなたの隣で過ごした時間は人生の何パーセントにも満たない小さな時間なんだとしか思えない。
「なにがっすか」
もう一回言ったら、妙にザキさんが呆れたようにみている気がした。でもそれは明らかに気のせいなのに俺は勘違いしてまた今日もザキさんを困らせる。
「なに泣きそうな顔してんだよ」
「だって、ザキさんよくわかんないっす、質問」
「あーあー悪かった悪かったちゃんと言うから」
ぽすぽすと背中を叩かれて、じわじわと背中から安堵が広がっていく。ザキさんが隣にいる、近くにいると実感していく。
「なんでこうやって家にいて、何もしてないのに幸せなんだろうな」
ザキさんの骨の浮き出た手が俺の手の甲を撫でてから上から握る。
「泣くなよ」
反対の手の甲で涙を拭った。



ラブユー


(あなたの愛が無ければ死んでしまうというのに)




「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -