春の足音は雪を溶かす。最近降った珍しい雪は、クラブハウスからは姿をくらました。良く乾いた土壌に、切りそろえられた芝生。さっきまで一緒に笑っていた先輩の笑い声はロッカールームに吸い寄せられて、俺と椿は切り離された外の世界にいる。
「温かくなってきましたね」
「ああ…まだ梅もさかねぇのな」
「今年は開花遅いって聞いたっす」
「マジで?」
他愛のない話をしながらぐぐぐ、と背を伸ばす。春の近いせいか眠くて仕方がない。
「春か、」
「はい」
「花見の約束でもしとくか。夜桜…とか」
「はい…え」
「2人で」
ああちくしょう。また欠伸だ。欠伸をしてから椿を見やると、いつもより目線がちらちらしてまた去年と同じようにうーとか、恥ずかしがっているから可愛くてくくく、と笑いが漏れる。
「…いかねぇの?」
「え、い、行くっすよ!」
「相変わらずなのなお前」
「す、すいません!」
「いやそういうとこがまた…」
可愛い、とか言いかけてこっちが恥ずかしくて黙る。俺も変わっちゃいない。
「…はっ、早くシャワー行くぞ」「う、うす」
春は駆け足でも俺らはいつまでも変わらないでいる。
「…もう、開幕っすね」
「そうだな」
今年も春が、やってくる。



spring



大分前に書いたのにくすぶってた開幕前のやつ。ザキバキのあのわああ恥ずかしい見てるこっちが恥ずかしいっていうのがどうも出ない。

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