帽子を取って、コートをハンガーにかけて執務室のロッカーにしまう。隣のロッカーにはまだクダリが帰ってきた形跡はなかった。今日のクダリの帰りはいつだろう。なんだかんだで真面目に仕事はこなす弟なのです。
私とクダリは世間的には認められない関係でしょう。外では気づかれてはいけない。二人はごくふつうの双子の仲良し兄弟、だと思われるような振る舞いを覚えなければなりません。はじめのうちは少し気を使っても、もう慣れてしまいまして、ですが、ああ、慣れないことはまだございました。先日のこと。


バトルサブウェイには毎度お馴染みのトウヤ様とトウコ様がマルチトレインにいらっしゃいました。相変わらず手ごわいお二方ですが、バトルが手ごわいだけならまだよろしい。
「お疲れ様ですトウコ様、トウヤ様。またいらしてくださいまし」
「楽しかったですありがとう」
「それにしても相変わらずノボリさんとクダリさんは仲がいいですね」
トウコ様はどうもその…ご理解があるそうで(本人が仰られました)毎度毎度こうして私をハラハラさせる話題を振りかけてくるのです。
「うん。僕とノボリ兄さん仲がいいんだ」
お気づきになっていただけるとありがたいのですが…その、わたくしどうしてもクダリに兄扱いされるのが苦手なのです。特に兄さんという言葉を聞くとむずかゆくて仕方ないのです。クダリは普段呼び捨てで、こうしてなんだか危ないかな、というときに家族愛の象徴として私を兄と呼びます。これがなんだか、私には居心地の悪いものです。




「ノボリただいま。早く家に帰ろう」
同じように帽子とコートをロッカーにしまう。
ああ、そうなのです。兄扱いされるとますます我々の関係を禁断のものとする雰囲気が高まってしまうのが私が苦手な理由なのです。このクダリに、私の弟に兄と呼ばれるだけで体中が湧き上がってしまいます。たった数分の神様の悪戯で出生に時間差があるだけで、生まれる前から共にある私たち。

兄と呼ぶのはやめてくださいまし。重い重い責任と罪悪感と、あなたへの気持ちがただ私を震わせてしまうのです。











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兄さんの話。
兄さんはクダリは好き。だけどこれはいけないこと。とわかっているからつらい。
ネガティブ。
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