白石の発言から場の空気は一転。
誰もすぐには口を開かず、俯いてしまったユキちゃんと、目線を彷徨わせるわたしと、面白そうだけど無闇に口を出してはいけないなと思っているのかなんとも言えない顔をしている謙也と青井とミキ、そして一人何食わぬ顔をしている白石という何となく気まずい時間が過ぎる。
昨日休んだ先生は今日も体調が悪いようで、また自習になった。
その時も、休み時間も白石はわたしの席に来てわたしは適当な返事しかしないのに飽きもせずにいろんなことを話して、最後に髪を撫でて自分の席に戻っていく。
ミキには、白石くんと何かあったのかと聞かれたけど、何だろうね、としか答えられなかった。





そして昼休み。
筆箱を持ってわたしの前の席に座る白石と、その隣に座るユキちゃん。
ミキや謙也、青井も集まって皆で解きはじめる。
わたしは授業中に少しやったので、後少しだったけど他の人はそうでもないみたいだった。



「…」
「ん、そこ難しいな、教えたろか?」
「ここ、この式をKって置いてやってけばいいの?」
「おん、せや。よくわかったなあ」



偉い偉いとまた頭を撫でる白石。
謙也がすごい見てくるのでその手を取って頭から離させると、青井がツンデレきたー!と騒ぎ出した。
プリントやれよ。



「かわええなあ」
「く、蔵ノ介くん!うち、ここわからんのやけど…」
「え!ん、ああ俺のプリント貸したるから、それ見てやりや」
「…ありがとう」

「…!」

カラン、



終わった!
シャーペンを投げ捨てて白石を見る。
白石は終わったん?ごくろうさん、と綺麗に笑った。



「頑張ったなあ」
「白石が教えてくれたからだよ」
「そんなことあらへんよ」
「な、なあ悠紀、トイレ行かへん?」
「いいけど…」
「行こ!」



突然ユキちゃんが誘ってきた。
席から立ち上がる前に手を引かれて連れていかれる。
明らかにトイレには向かってないよね、これ…!
す、と手を離され、立ち止まる。



「悠紀、うち、蔵ノ介くんのこと好きなんよ」
「は!?ああ、うんそうなんだ(わかってたけど)」
「…なんで蔵ノ介くんと仲良くするん?」
「してないけど」



今は、ね。
ていうか前もそうでもなかったし。



「うちが蔵ノ介くん好きなの知っててやってるんやろ!?」
「ちが!」
「うっさいわ!応援してくれるんなら、もう近づかんでや!」
「え、えええ」
「教えたんやから、応援してくれるやろ?」




応援するなんて言ったことも無いけど。
なんだか強引に話が進められている。
ユキちゃんは顔を真っ赤にして今にも泣きそうである。
正直泣きたいのはこっちだ。
つうか君そんな性格だったのね。
どこか他人事のようにその光景を見る。




「それは出来んなあ」

「!」
「蔵ノ介くん!なんで…」
「ん?何でもええやんか、それより、後藤さん。俺、加瀬好きなんやけど応援してくれるやんな?」
「…え、どうして…」
「教えたら、応援してくれる、やろ?」
「…っ!」



目元を拭いながら走って去っていくユキちゃん。
嫌われたかな、これは。
思わず追い掛けようとすると壁に追い詰められた。
顔の横に両腕を付かれて、前は白石、後ろは壁。
昨日もこんな体勢になったな、そういえば。



「ちょ、ユキちゃん泣いちゃったよ」
「どうでもええ」
「良くないよ、」
「どうでもええから!」
「!」
「すまん、加瀬…」



こつん、とわたしの肩に頭を埋める。
壁に付いていた手は、いつの間にかわたしの背中に回されている。



「好きや、好きなんや…」
「白石…」
「他なんてもうどうでもええ、なりふりなんて構ってられん、」
「…」
「こんな事なら、早う周りに言ってまえば良かった…!」

「加瀬…」










「頼む、俺を好きになってくれ…!」







ぎゅう、と力が強くなる腕。
恐る恐るわたしも白石のワイシャツを掴む。
白石の右腕が腰に、左腕が肩に巻き付き、苦しいくらいに力が込められたけど嫌じゃなかった。
そっと掴んでいるだけだった手を白石の腰にまわす。



「…出来ないよ、それ…」
「…加瀬」



びく、と肩が揺れた。
体を離そうとする白石を離さないように強く抱き着く。
今、今思ったことを言わなくちゃ、絶対後悔する。



「もう、好きだもん…」

「加瀬!…ごめんな、ごめん…!本当に、好きや…」
「うん」
「別れるなんて、言わんといて」
「ん、言わない」
「言いたいことは全部、俺に伝えて」
「うん」
「それから、皆に言おうや」
「なんて?」
「俺ら、付き合ってますって」



…前に秘密にしておこうって言ったのは白石の方なのに。



「いいの?」
「おん、加瀬は俺のやって、皆に知らせたい」




さらっと言いのける白石に顔があつくなった。
そんなわたしの頭をぽんぽん叩き、んー絶頂やな、と呟いた白石は嬉しそうだった。
じゃあ、わたしからもお願い、と名前で呼びたいというともちろんや、と食い気味で答えられた。




「なんか、凄い変わったね」
「おん、もう隠す必要も無いからな、バカップル万歳や」
「…恥ずかしいから」
「今に慣れさせたる。ほな、教室行こうや」



自然に指を絡められて歩きはじめる。
が、2、3歩ですぐ止まり、突然の事で反応できなかったわたしは白石の背中にぶつかりそうになる。
目をつぶったわたしの額に温かい感触がしただけで。
手をつないでいない方の手で額を押さえながら目を開けると、思いの他近い位置に白石がいた。



「わ、今…」
「ほんまかわええ」



上機嫌で歩いていく白石を見ながら、恥ずかしいとは思いつつも全然嫌じゃないわたしはきっとそのうち本当にバカップルとか言われちゃうんだろうなあ、と悟った。





20121023


終わりました!
オチが中々決まらず…
とりあえずハッピーエンドで終わらせたい、と思っていたので、良かったです!
反省点は色々ありますが、長くなりそうなので割愛させていただきます。
ご意見感想などありましたら拍手などからどうぞ!







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