そんなこんなでマネージャーを続けること一年と少し。
一年生の時は先輩もいて楽だったマネージャー業は先輩達が引退した途端大変な事になった。
分担していた仕事が全てわたしに回ってくるようになったのだ。
しかも先輩達はみんな外部受験をしてしまったので合同練習で会う事もない。
一つ上の代にマネージャーは一人も入らず、かわいい後輩に期待していたわたしに、部長は残酷な事を言った。



「二人で足りるからマネージャー募集しなくて良いよね」



同意を求めるように首を傾げる部長の綺麗な顔は否定するわけないよね?とわたしに訴えているようだった。
ね、のイントネーションが普通なら上がるはずなのに下がっていた。
断定のね、というに違いない。
この言葉にいち早く返事をしたのは彩音ちゃんだった。



「うん!思ったよりも忙しくないから大丈夫だよ!」




お ま え は な ! !

実際わたしの仕事は倍以上に増えてるから!
彩音ちゃんやってるの応援とあとドリンクとタオル配るだけだもんね!
しかもそのドリンクとかコートまで運んでるのわたしだしね。


いや、我慢だ。
この頼もしい言葉を先輩方にしっかり聞かせて、「わーじゃあ彩音だけでも大丈夫なんじゃねー?☆」っていう展開に持ち込もう。





「神田さんも、それでいいよね?」
「はい、彩音ちゃんが頑張っているので」



わたしがそういうと彩音えらいのーとか褒めてやるぜぃ!とか彩音ちゃんに群がる先輩方。
よし、いいんじゃないかこれは。



「そ、そんなことないよ!わたしなんかまだ全然で…」
「いや、彩音はよく頑張っていると思うよ。じゃあ今年はマネージャー募集しないから、二人で、頑張ってね」




二人で、をやけに強調された気がした。
どういう意味だ。
部長は苦手だ。
中学の時から何の関わりもなかったけど、高校に入ってからなんだか優しいけど刺々しいというか、とにかくわたしは気に入られてはいないようだ。
だからどうっていう話ではないのだけれど、やっぱりずっと続けて来たのにこの反応は少し嫌だなあ、と思う。




「じゃあ部活を始めようか。彩音、今日も頑張るんだよ」
「はいっ!精市先輩も頑張ってくださいね!あ、悠ちゃん、このタオルとかもう持って行っていいのかな?」
「うん、持って行ってくれる?」
「任せてっ!」




両手にタオルをかかえ、先輩方と部室を出て行った彩音ちゃんを見送り、ドリンクを作ろうと用意を始める。
あ、救急箱コートに持って行ってなかったなあ、と気づいて棚の上から取ろうと椅子に乗った瞬間、外で彩音ちゃんを呼ぶ先輩方の声が聞こえた。





あ、これはタオル洗い直し…か…?


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