わたしがそうまでしてバスケ部に入りたい理由は、もちろん小学生の時にミニバスをしていたから、と言うのもある。
女子の平均よりはいくらか背が高いわたしにバスケはあっていたのか、楽しくて楽しくて仕方がなかった。
もうしばらくはやってないけど、残りの一年半…は、無理かもしれないけれど…せめて大学に、大学に入ったら絶対バスケサークルに入るんだ…!


そしてもう一つ



わたしの兄もバスケをしているから。
わたしより三つ年上で、今は立海大の経済学部の、伊織くんが。
とても優しくて、かっこよくてバスケもびっくりするほど上手な自慢の兄だ。
言うまでも無いとはおもうけど、わたしは割と重度なブラコンである。
そしてそれ以上に妹のわたしが言うのも変だが、兄はわたし以上のシスコンだ。





王者立海大という呼び名はなにもテニスだけではない。
バスケも王者の名に恥じない活動をしている。
テニス部の次に有名なのは多分このバスケ部だとわたしは思ってる。
だって伊織くんかっこいいもん。
中学高校とバスケ部を続けていた伊織くんはその実力と人望を買われて部長もやっていた。らしい。
ぶっちゃけ三つ離れていると学校で会う事もないからなんとなく流れてくる噂でしか聞きた事がない。



さて、ここで立海大の部活動の特色をあげてみよう。
中高大と続いて行くこの学校は定期的に合同練習や合宿を催している。
だからマンネリ化せずに、お互いを刺激しあって強さを保っていける。
そう、この合同練習。
合同。

わたしがバスケ部に入れていれば、伊織くんと練習ができたんだ。
わたしが中学生で伊織くんが高校生の時は

「悠がバスケ部にいれば一緒の時間をもっと過ごせたのにね、どうして悠はテニス部のマネージャーなんかしているんだろうね。悠に変な虫が今にも付きそうだと思うとお兄ちゃん本当に心配なんだよ?やっぱり今からでも俺の目の届くバスケ部に入るべきだと思う」

とそれは輝かしい笑顔でよく言われたものだ。
だから高校こそバスケ部に入ろうと思ってたのに…。
ちなみに隠していたはずの入部届けをあっさりと見つけられ、そこに記入してあるテニス部という文字を見た伊織くんはそれはもう素晴らしい笑顔だった。



「へえ、テニス部?」
「あ、あの、これは、」
「バスケ部には入ってくれないんだ?」
「入りたかったんですけど、事情が」
「悠、少しお話しようか」



壊れものを扱うように優しくエスコートをしながら自宅(伊織くんは一人暮らししてます)に向かう伊織くんにわたしはがくぶるだった。
家についてからはソファの上に正座を強制され、無断で夜遅くまで出歩かないことやとにかくお兄ちゃん優先に、しなさいと言うことを誓わされた。


なんだかんだいいつつそんな伊織くんがわたしも大好きなのでとにかくはやく部活をやめたいです。




「んー、選手として一緒にプレイできるのも良いけどマネージャーもしてもらいたいなあ」
「そう?」
「あ、でも俺以外の世話もしなきゃいけないんだよね、やっぱだめ。悠は俺の妹だし」
「そうですか…」
「うん」



何時間後かにやっと解放されてぐったりしていたわたしとは裏腹に清々しい笑顔でそう言ってのけた伊織くんをわたしは忘れない。







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