よく考えてみれば確かに彩音ちゃんは不器用だった。


でも頑張ってた。


何回やってもうまくいかないドリンク作りも洗濯も何回も何回も挑戦していた。
ドリンク渡す時も笑顔で皆を励まして。
とにかく一生懸命やっていた。




真北さんは何でもできた。
ドリンクもわたしなんかより全然美味しいものを短時間で作ってた。
器用にいろんな仕事をやってのけた。
テニスの事もよくわかっているようで、気づいた事を部長に言ってる姿だって見た。






わたしは?


入りたくて入ったんじゃないからって一生懸命やらなくて。
バスケ部に入りたい気持ちは嘘じゃない。
でも、それが一生懸命取り組まない免罪符になるわけない。

彩音ちゃんができない事ができるからって偉そうにして。
一人でやってる時は何も思わなかったのに彩音ちゃんが入ってから何をやるにも彩音ちゃんが出来ないから仕方ないな、と思いながらやってた。
全部マネージャーの仕事なのに。
仕方ないな、じゃないのに。
やるのが当たり前。



それに、彩音ちゃんはわたしが中学時代をかけても打ち解けられなかった彼等と一ヶ月もかけずに打ち解けたじゃない。



試合の時も彼女の励ましがあったから頑張れた、という人だって多々いるに違いない。


それはわたしができないことじゃない。






なんでもできる真北さんが来てからはわたしは何をしたの?
彼女はレギュラーと仲良くなりたい、とは言っていたけどそんな彼女にわたしは結果的に仕事を押し付けた。
ドリンクはわたしも手伝うものの彼女がやってくれるようになったし、真北さんは仕事を効率よく進めてくれてたからわたしの仕事は半減してた。
タイム計測やスコア付けを優先的に真北さんに頼むようにしてからもわたしの仕事の量は変わらなかった。
それはつまり真北さんの仕事が増えたってことで。





やめたい、とか思ってるくせにいざ自分が貶されると不機嫌になって。
サボってるって言われてむっとした。
周りからみればどう見ても仕事をしてないのは私なのに。




考えれば考えるほどに自分はろくでもない人間であることを痛感した。


そしてわたしは底なしのクズであるようだ。

情けない自分が許せない気持ちは大きい。
でもだからといって彩音ちゃん達のようにこれからコミュニケーションを図って行こうとは思えなかった。



当面の目標は、テニス部を辞める時に
「めんどくさくなって辞めたんだろ」
とか言われないようにひとつひとつを丁寧にしっかりこなして行く事にした。





神田悠、今日一つ大人になった気がします。
頑張りたい気持ちはあるけどなんかあのアウェイな場所に行きたくない気持ちもさらに大きくなったのはまあしょうがないよね。
休む理由がないから行くしかないけど。








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