「ここに置いておくわね」
「ああ、ありがとう」
「相変わらず逸月のドリンクは美味いのう」
「ええ、そうですね」
「当然よ」



いつもならそこで何かしら話してから帰ってくるのに真北さんはすぐにわたしのところまで戻ってきた。
次は何やればいいかしら、といつになくやる気である。
え、いいよ話してきてよ。



「あ、マネージャー」
「何かしら」
「いや、逸月じゃなくて」
「はい」
「ちょっと持ってきて欲しいものがあるんだけと」
「はい」
「わたしが行くわ」




さっ、と横から入ってきた真北さんがそのまま話を済ませると倉庫まで行ってしまった。




「…」
「…」
「逸月、頑張ってるね」
「そうですね」
「マネージャーも頑張りなよ」
「はい、失礼します」



部長にさりげなく嫌味を言われた?のでさっさと洗濯をしに行くことにした。



「あーうめえ!!」
「ああ生き返るぜ」
「逸月は頑張ってんのになー」



歩いているとそう言ってちら、とわたしを見る人がいた。
流石にその視線の意味に気づかないわたしではなく。
一気に心臓から冷えていくようだった。
…仕事をサボってると思われている。
きっと、真北さんが今まで以上に仕事を頑張り始めたから。

歩く足を速める。
下を向いて歩いていたから前に誰かがいるなんて気付かなかった。



「…」
「あ、ごめんなさ…」
「…ちっ!」



謝り終える前に切原くんは舌打ちをして何処かに行ってしまった。
…え、ちょ、感じ悪くない?
今だからいうけどね、先輩たち切原くんに甘すぎだからね。
人に対する態度を考え直した方がいいと思うんだけど。
でも先輩たちには明るく振舞ってるしクラスでも明るいから多分わたしが嫌われてるんだろうけど。




「仕事もしねえし鈍臭えし…」



小さく呟かれたその言葉をわたしは聞き逃さなかった。
マネージャーを始めてしばらく経ったけどここまで部員に悪意をむき出しにされたことはなかった。
あまり話す方ではなかったからいう機会がなかっただけなのかもしれないけど、準レギュラーの人たちは毎回お礼言ってくれるからって自分は役に立ってるものだと思ってた。


彩音ちゃんは仕事できないから、とか驕った事も考えてた。




あれ、



わたし




最低じゃない?








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