順調だ。
本当に順調。




「なあ逸月!」
「今行くわ」
「早く来いって!」



レギュラー陣の輪に違和感なく入り込む彼女を横目に仕事を続ける。
最初の滑り出しから良かった彼女はすっかり皆さんと友情を育んでいった。
レギュラー陣が彼女を離さなくなったので仕事の量は逆戻りだ。



「…手伝う事はあるかしら?」
「んーん!ないよ!あ、じゃあこれ頼んでもいいかな?」
「…スコアね、それよりも洗濯とかは…」
「逸月、スコアを頼まれたんだろう?俺もそろそろだし一緒にいこうか」
「ふむ、頼まれてる以上のことをやろうとするとは感心だ」
「うるさいよ真田」




わざわざ部室裏まで来てくれる彼女をまたわざわざ迎えにくる。
うんうんいい感じなんじゃない?
美人、仕事もしっかりやってる、性格もいい?…性格はまだちょっとわからないけど良いはずだよね。
今までにない手応えを感じている。

気分が良すぎて最近は肌の調子さえ良い。
伊織くんにもご機嫌だね、と言われ頷いたら何かが琴線に触れたのか巻きつくように抱きつかれしばらく話してもらえなかった。



「〜♪…あだっ!」
「機嫌が良いな」



柳先輩がファイルを片手に私の背後に立っていた。
誰もいないと思って調子乗って歌歌ってたのに。



「神田、」
「柳せーんぱーい!どこっすかー!?」
「…赤也」
「…ここにいたんスか」



次っスよ、と急かす切原くんは去り際にちゃんと仕事しろよ!と私を激励?していった。
してるよ。
じゃあお前はテニスしろ。




「…赤也」
「何なんスか、あいつ」
「神田はしっかりやっていると思うが」
「…どうだか、わかんないっスよ」




何が心配なのかちょいちょいこっちまで戻ってくる真北さんにそれとなく楽な仕事を与えることに集中していた私が不穏な空気が流れていることになんか気付けるわけないよね。







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