「今日から正式にマネージャーになるそうだ」
「そうなんですか」
「ああ、教育係はお前しかいない。頼んだ」
「はい」



頑張ります!と意気込んでるわたしの頭を慣れたように軽く叩いて部室を出て行く柳先輩を見送ってわたしは転入生を待つ事にした。
柳先輩に頭撫でてもらったのと、見込みのある転入生が来たのでわたしのテンションは高かった。




「す、すごいね」
「このくらい当たり前よ」



転入生は昨日教えた事を完璧にこなしていた。
しかもドリンクにアレンジまで加えたらしい。
素晴らしすぎる。
この材料たちは自分で家から持ってきたのだろうか。

しかも部員全員分のボトルが水道に置いてあった。
これには目が飛びてるほどびっくりして思わず聞いてみたらこの程度しなくてどうするの?と言われた。
自信をなくした。



「もう少しで休憩だからドリンクとか持って行くんだけど」
「わたしが持っていくわ。あなたは部室で他の仕事を進めていていいわよ」
「あ、ほんと?じゃあよろしくね。えっと持って行く順番はタオルが…」
「もう持っていくわね」



さ、と優雅に髪を靡かせてドリンクボトルの入ったカゴを抱えて部室から出て行く転入生。
…タオルが先なんだけど…。
一緒に持って行こうかな、と思ったけど他の仕事進めててって言われたし…。




「皆、ドリンク持ってきたわ」
「あーやっと休憩だぜい…」
「…逸月、その量は俺たちには多すぎないか?」
「あなた達の分じゃないわ、準レギュラー達の分よ」
「え?…そうか」
「当然の事よ。わたしは贔屓なんてしない」
「…タオルが無いようだが」
「すぐ持ってくるわ」
「…神田に教わらなかっただろうか、タオルが先だと」
「…そうなの、ごめんなさい。何も教わってないから…」




「なんかドリンク美味しいな」
「ジャッカルもそう思うだろぃ!?よこせ!」
「何でだよ!」
「…本当ですね。味が変わりました」
「そうじゃの」



もちろん裏で洗濯をしていたわたしがそんな会話があったとは気づくはずもなく。
仕事を増やさずにしかも減らしてくれる転入生に感謝の念さえ抱いていた。



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