転入生は次の日も見学に来た。
もう入部はほぼ決まったようなものらしい。
昨日みたいに練習をひたすら見ているわけじゃなくて今日は仕事を見たいらしい。
だからわたしは昨日の事は忘れて明るく話しかけながら仕事を説明した。



「それでね、ここでドリンク作るんだけどね」
「…」
「じゃあ作ってみるね」



会話が成り立ったことがない。
一人で喋ってるよ!




「ねえ」
「え!?あ、なにかな?」
「ボトルが部員に対して少なすぎる気がするんだけど」
「あ、これはレギュラーだけで」



そう言うとぴく、と反応してわたしをきっと睨んで来た。
うわ、美人だから迫力やばい。




「…レギュラーだけ?」
「うん」
「それ、贔屓だと思うわ」
「は?」
「マネージャーなら皆平等に扱うべきってことくらいわからないの?それにさっきから見ていたけれど効率が悪すぎるわ」
「はあ」




要領悪いのね、と鼻で笑う転入生。
あまりの事に呆然としているとドリンクを勝手に作り始めた。
少し覚束ないようだったので要所要所で教えているとその度にわかってるわ!と睨まれた。
でも下から見られてもそれただの上目遣いだからね。


少しずつドリンクを作って行くのをみてわたしは嬉しくてたまらなかった。
だって飲み込みはやいんだもん!
これは本当に有能な子がきたよ!



夕方、家に帰って伊織くんにその事を報告した。



「昨日は無視されたりしたんだけどね、なんかその子覚えるの早くて…」
「え?」
「だからちょっと希望が見えてきたかも!」
「無視されたの?」
「そこ?食いつくの」
「無視したんだ、悠を。名前なに?そいつ」



礼儀教えた方がいいよね、のねの部分でプチトマトをフォークで刺したのは意味があるのかな。






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