倉庫まで行って紙に書かれたものを探し始める。
わたしは横着な人間だから、できれば倉庫とコートを往復なんてことはしたくない。
だから多少重くても全てを重ねて一回で運んでしまおうと持ち上げた。








「こ、腰折れる…」








思いのほか重かった。
持てない重さ…になりつつはあるけれど、それよりも嵩張りすぎて前が見えないことの方が問題だ。
進行方向に対して横向きになってカニ歩きのようにひょこひょこ歩き始めることにした。
なかなか滑稽である。










「うおっ!何かと思ったらマネージャーかよ」
「…すいません」
「いや謝ることじゃねえけどよ、おら、貸してみろ」






どうしてここにいるのかはわからないけど桑原先輩が荷物を半分以上攫っていった。
桑原先輩まじ優しい。
いつもなら大丈夫だから、と断る所だけど今回は本当にどうしようかと思ってたからありがたく好意を受け取る。






「あの、ありがとうございます」
「気にすんなって。つか分けて持つとかしろよ」
「なんかめんどくさくて」
「おっまえなあ…」








じゃあ誰かに言うとか他にあったろ、と荷物を持ったまま少しわたしにぶつかってくる。
それにわざとらしくよろけて、善処します、と答えるとにかっと笑った。
おおお。
桑原先輩まじこの学校の良心。
柳先輩と並んで二代良心。
でも柳先輩は切原くんとか副部長が部長にいじられてる時とか普通に見捨ててるから多分その時もオロオロしてる桑原先輩が一番良心。








「何をしている」
「柳…」
「部長に頼まれた荷物を運んでいるんです」
「そうか、ありがとう。ところでジャッカル、お前の番は次にまで迫っているぞ」
「げ、まじかよ…悪い柳、これ頼んでもいいか?」
「ああ引き受けよう」
「さんきゅ、じゃあなマネージャー」
「はい、あ!ありがとうございました」








ラケットを握って軽快にコートまで走っていった桑原先輩の背中を見る。
すると荷物を抱えた柳先輩が俺たちも行くぞ、と声をかけてくれた。








「はい」
「お前は、ジャッカルには懐いているな」
「そうですかね?」
「ああ」
「桑原先輩優しいですから」
「そうか」
「でも柳先輩も優しいです」
「…そうか」











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