do not have to





何故か蔵ノ介が優しくなってから二週間

あの優しさはあの日限りの気まぐれなんかじゃなくて持続している。
仕事も忙しいはずなのに家に帰ってこない日はない。
たとえ一時間しかいられなくても蔵ノ介は帰ってくる。



「ただいま」
「おかえりなさい、遅かったね、疲れた?」
「おん、でも少ししたら出るわ」
「そっか、無理して帰ってこなくても良いんだよ?」
「俺がここに帰ってきたいねん」



明らかに疲れていそうな顔をしているのにそう言って笑う。
マネージャーであろう人に電話をされてはじめて嫌そうにこの家を出て行く。
この前いってらっしゃい、とリビングから声をかけたら玄関まで見送ってくれへん?と言われたので今更玄関まで見送りに行っている。



「はい、上着」
「おおきに」
「いってらっしゃい」
「おん、頑張ってくるわ」



蔵ノ介が座って靴を履いている横にわたしもしゃがみ込んで話しかける。
靴を履き終えた蔵ノ介が立ち上がりざまにわたしの頭をぐしゃっと撫でるのももう恒例だ。




「あ、藍」
「?」


「…っ!」
「いってきますのキス、なんて…」



くさかったか、と照れたように頭をかきそそくさと出て行った蔵ノ介をなにも言えずに見送る。
…本当にどうしちゃったの、



でも幸せなのは確かで。
少しの違和感を心に秘めながらもそれを追求しようなんて思わなかった。







20121217



短めで



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