It does not lead each other.




「藍」
「んー?」
「今日、覚えてるやろ?」
「うん」



そか、じゃあなと振り返らずに朝、家から出て行った蔵ノ介。
だから、忘れている、なんてはずがない。
あっちから確認してきた位なんだから。


4周年記念日は、二人で祝おか


珍しく蔵ノ介がお休みで、わたしも大学が休みだから二人でぼうっとテレビを見ていたとき、コップに口を付けながら蔵ノ介はそう言った。
今多忙を極めている蔵ノ介がまさかそんなことを言うなんて思っていなくて、思わず蔵ノ介の顔をまじまじと見てしまった。
…口、開いとるで、と冷たく返されてしまったけれど。

とにかく、それなりにわたしはこの日を楽しみにしていた。
何より、久しぶりに蔵ノ介とゆっくり話せるんだな、と思ったから。

それが、



「まあ、予想はしてたけど」



只今、夜の11時。
もう日付も変わってしまう。
まあ、相手は今が旬の俳優さんだから仕方ない、と自分に言い聞かせる。
こんなこと、何回もあったじゃない。
お仕事が忙しいなんて、あの職業だったら嬉しいことだし。
わたしはいつでも会えるんだから。


せっかく作った料理にラップをかけて、冷蔵庫に入れる。
これは明日食べれば良いかな。
一息着いていると、着信が来た。
あ、もう日付変わってるじゃない。



「仕事終わらなくて帰れなさそう」



…日付変わった後に送ってんだから、帰れない、じゃないの。
きっとまだ全然帰ってこないだろうな。

…物語のヒロインなら、寂しくて泣いちゃったりとかするのかな。
その前にヒーローがぎりぎり間に合ったりするんじゃない?

なんだか拗ねているみたいだけど、違う。


本当に、予想していたから。
こうなってしまうことは。
正直、何の感情も沸いて来ないのだ。


その日は、いつも通りベッドに入って眠りについた。












「…ん、」



朝日が、眩しい。
カーテン開けて寝たんだっけ、と目を擦りながら寝返りを打つと蔵ノ介が肘を立てて頭を上に乗せてこっちを見ていた。



「おはようさん」
「おはよ、帰ってきてたんだね」



わたしは寝起きが良い方ではない。
今もまだ頭がふわふわしている状態で、蔵ノ介が何を言っているのか半分わかっていないような状況だ。



「…ごめんな、昨日は」



蔵ノ介が片手を伸ばしてわたしの髪に触れる。
…なんか、こんなに近いの久しぶりな気がして緊張するなあ。
うーん、と少し唸ると寝ぼけてるん?と笑われた。



「…ちょっと、まだ眠いかな」
「そか、まだ寝たらええよ」
「ね、昨日のことだけどさ」
「ん?」
「気にしなくて良いよ、なんかわかってたし」



ぴた、と頭を撫でる手が一瞬止まった。
そのあとはお互いに自分の支度をして、朝ご飯を食べて、家を出た。
蔵ノ介は仕事が忙しくなったらしく、それから一週間帰ってこなかった。




20120923


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