Only one of the perfect men






ひらひらと舞い落ちる桜吹雪の中、わたしはただ立ち続けることしかできなかった。


溢れ出す涙を止めることもできず、ただ、ひたすら。










「あ、白石いた!」
「…呼び出してもうてかんにんな、藍」
「ん、全然いーよ」
「どうしても言いたいことあんねん」






「俺と、付き合ってください」





「…え、」
「好きや、藍。クラスも離れてもうたし、今言わないともう言えんと思った」
「…」
「遠慮せんでええよ、断るんなら断ったらええ。ただ、これから俺んこと避けるのとかはやめてな?」




「…わ、わたしも…好きだから…避けたりとかはし、しないよ」







今みたいに桜の花が降る中付き合いはじめたわたしたち。
始まりも桜なら、終わりも桜なのか。

いや、もうとっくに終わってたか。



自嘲気味に小さく笑うと余計に虚しさが出てくる。






本当に好きだった

大好きだった



でも、もう絶対に無理なんだね


やり直すことなんかできないんだ





「…っ」





最後にわたしの想いも伝えることはできなかった




「…っ!」




未練がましいことはしないよ



いつか、良い思い出と笑えるようになったらいいなあ…






「…藍!!」




「…蔵ノ介…?」







「藍…はぁっ…やっと追いついた…」



息を弾ませた蔵ノ介がわたしの右腕を掴む。
そのままぐいっと引き寄せられて、わたしと蔵ノ介の距離はゼロになった。




「藍…会いたかった…!」
「蔵ノ介…」




ぎゅう、とわたしを抱きしめる蔵ノ介。
わたしも思わず抱きしめかえそうとしてとどまった。



「なんで…こんな勘違いさせるようなことするの!?」
「え?」
「後藤ユキちゃんがいるのに…蔵ノ介は酷いよ!もう…わたしを振り回さないで…」



「ちゃう!誤解や!」



身体を離して誤解だ、と訴え説明してくる蔵ノ介。

蔵ノ介は再度わたしを抱きしめると、懇願するように囁く。




「藍…俺の所に戻ってきてや…」






私たちはつまらないことですれ違っていたのかな

こんなに好きなのに、蔵ノ介の元に戻らないわけないじゃない





「好きや、愛してる…もう離したくないんや…!」





いつだって愛を注いでくれていたあなたを疑ってしまったのがいけなかったのかな
お互いが近すぎて見えづらくなってしまったのかもしれないね





「俺に、もう一度だけでいい、チャンスをくれへんか」










「絶対に藍を幸せにしてみせるから…!」







蔵ノ介の腕に手を添えてゆっくり解かせる。
不安そうな顔の蔵ノ介に微笑む。



やり直したいのは君だけじゃないんだよ

わたしも蔵ノ介の事大好きなんだよ、と教えるように。








「え、それって…」
「…白石、肩に桜の花ついてる」
「肩?」
「とってあげるから…こっちきて?」
「お、おん」



ぎゅう



「…!」
「ごめん、うそ…」
「…藍」
「なに?」
「あ、頭に花びらついてんで」



ーーーーーちゅ、



「!い、いまおでこ…!」
「…はは、真っ赤やで、かわええ」
「誰のせいだと…」

「なあ、藍」
「…うん」
「俺と、付き合ってください」

「…はい」










「蔵ノ介、桜の花がついてるよ」



言うと同時に背伸びして蔵ノ介の首に腕を回して抱きつく。
蔵ノ介は抱きとめてくれて、一瞬遅れて反応を返してくれる。





「藍も、髪についてんで」



髪についている筈なのにくい、と顎を上に向かされる。
それに抵抗しようなんて思う筈なくて。
自然に上を向いて目を閉じる。






あの頃とは違って、今度は唇に





ゆっくりと蔵ノ介の唇が重なり、お互い精一杯の力で抱き合う。
ようやく離れた時、際限なく落ちて行く涙を蔵ノ介が拭ってくれた。










「結婚しよか、藍」
「…!」
「これから一生、俺の隣にいてくれんか」
「…わたしなんかでいいなら」






喧嘩したことだってある

今回みたいにもう戻れないと思うこともあった



楽しいことだけではないけど、それでも蔵ノ介と出会えて良かったと思ってるよ



あなた以上に愛せる人なんて

きっと世界中のどこにもいない




好き

大好き


愛してる




本当にずっと一緒にいてくれるの?











「当たり前や、藍は俺のたった一つの宝物なんやから」














fin.






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