It begins to run from me.







久しぶりに自分でミルクティーを作って、少し奮発して買ったお菓子を食べよう、と用意していたところに入った一本の電話。





蔵ノ介が倒れた……!?




学生の頃から人一倍体調管理には気を使っていた蔵ノ介が倒れるなんて、一体何をしたんだろう

どく、どく、と鼓動が電話越しに蔵ノ介のマネージャーさんにも伝わってしまうんじゃないかと思うほどに激しく波打つ。








「白石の病室を教えます。来てはいただけないでしょうか」





蔵ノ介はどうして倒れてしまったの?

ねえ、過労で倒れたって本当に?

心配で心配で仕方ないよ
会いたくて会いたくて仕方ないんだよ





でも




「…行けません」
「…何か急ぎの用事でもありましたか」
「そうじゃないんです」








「わたし、蔵ノ介とは別れたんです」























提げていた袋から先ほど買った物を取り出してぼんやりと見つめる。



「買っちゃった…」



蔵ノ介のCD
しかも初回限定版。
ぺりぺりと外側の包装を手こずりながらも丁寧に剥がす。
…なんか手が震えるんだけど。


ぱか、とケースを開けてディスクを取り出す。
とりあえず聞いてみようと流し始める。


結局毎回欠かさず見てしまっているドラマの主題歌が一曲目に流れて歌詞カードを見ながら小さく口ずさむ。


まだ小さく胸が痛むけど、だいぶ落ち着いて蔵ノ介の事を考えられるようになってる。
…早く元気になるといいけど





「…あれ…」



この曲、作詞が蔵ノ介じゃない…?
作詞したと言っていた筈だけど…。
作詞作曲は同じ人の名前だったけど、それは蔵ノ介の名前ではなかった。
不思議に思ってカップリングの曲を確認すると







「…追憶?」






そこには作詞の欄に白石蔵ノ介としっかり記入されていた。
まだ途中だった曲を止めて二番目の曲に切り替える。






手がさっきよりも震えていても、涙で歌詞が見えなくなっても歌詞カードから目が離せなかった。
何回も涙を拭って、一文字も見落とさないように聞きいる。






蔵ノ介


わたしは自惚れてもいいのかな?


わざとこの曲に桜を入れたの?


もう抑えきれない


蔵ノ介、会いたい


もう一度でいい
話したいの










一度は断っておいて、何で来たんだと言われるかもしれない。
もしかしたら本当にわたしのうぬぼれで勘違いかもしれない。
それでもわたしはコートも羽織らず、お財布とケータイだけ持って部屋を飛び出した。











20130303










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