It collapses a man's every day.







今日も一日なかなか疲れた。
最近はよく仕事をいれてもらえて、充実した毎日を遅れていると思う。
その充実の中にはもちろん藍も入っている。
今日も帰ればおかえり、と玄関まで迎えにきてくれて、俺はそれを幸せに思いながら返事をするのだ。
ずっと、ずっと続けばいい。
やっと気付いた俺の幸せ。
絶対に藍を離したりしない、勘違いで済んだが、あの瞬間だけでも俺は耐えられなかった。



あの日から、俺は藍にちゃんと向き合うようになった。
俺自身も最初はぎこちなく、藍も俺の変化に戸惑っているようだったが、やっぱり笑った顔は変わってなくて、安心すると同時に改めて愛おしさを感じた。
一人でどこか行かせるのはやっぱり不安で、無理やりついて行ったりもした。
スクープを取られたって構わなかった。
藍と一緒にいたかった。








どこからか後藤ユキとのスキャンダルが出てきた。
俺は身に覚えがないし、後藤さんも何なんでしょうね、と困ったように笑っていた。
彼女はデビュー作が俺の主演作品で、初日は緊張していたものの、次の回からは熱心に質問にきたり、相談にきたりしていくうちに、どこか大阪にいる妹を思い出されて可愛がっていた。
彼女も好きな男がいるらしく、困ったなあ、と言っていたのでここは否定していこうという結論になった。
どこか切なそうな顔をしていたので相手の男に勘違いされることを憂いているようだ。
お互いのためにも早く解決しなければいけない。




帰ってすぐ、弁明しようと思っていた。
でも、撮影と撮影の間の時間がかなり開いていたので街をぶらぶらしていたら藍に合いそうな指輪を見つけた。

ふと自分の首を見る。
なけなしの金を集めて買った、言わば俺の独占欲の輪。
藍は、俺のものだと周りに忠告したかった。
仕事中はチェーンに通しているが、今は仕事中ではない。
チェーンから外して、左手につけるとやっぱり馴染んだ。
当時は高価だったが、仕事を始めた今では少し安物すぎる。
藍にはもっと良いものをつけさせてやりたい。
値段が最優先で、デザインなんて気にしていられなかったが彼女にはこんなシンプルなものよりも似合うものがある。


無償に買いたくなった。
そして、どれがいいか、見定めている時に言いたくなった。
結婚しよう、と。
すぐに購入して、大きさを図るために指輪を外した。
文字を掘りますか、と言われて何も浮かばず、とりあえずお互いの名前だけ掘ってもらった。
そこで時間が来たのでまた後で来る、と伝え仕事場に戻る。


リングをその場に置き忘れて。








無いことに気づいたのはすぐ後だった。
しかし取りには戻れず、俺は何もかかっていないチェーンを握りしめるだけだった。
大丈夫、無くしたわけじゃないのだから、取りに行けば俺の手元に戻ってくるのだから。
とりあえずチェーンを外し、撮影する。



撮影を終えると、後藤さん含む共演者の方々が飲みに行こう、と誘って来た。
断ろうと思ったが押しの強い先輩には逆らえず、連行される形で連れて行かれた。
ああ、そういえば後藤さんは妹と違って酒が苦手だったなと思い、小さく俺の近くにおってもええよ、と言うとぱあ、と笑ってはい!と答えて、居酒屋では俺の隣に座っていた。

カメラにハマっているらしいおじさんが俺ら二人を写真に納めた。
二人はお似合いだねーと言われ、付き合っているの?と聞かれたので付き合っとるわけないですよ〜と返すとやっぱり?白石くん彼氏ってよりお兄さんみたいだもんねーと言われた。
あのおじさんは明るくて良い人だ。
後で現像するね、と言われたが俺は必要性を感じなかったので断った。
はやく藍に会いたい。









後日、リングを取りに行ったら商品も渡された。
今日、言うのだ。
断られる可能性だってないわけじゃないが、今俺は藍を俺のものにしたいと強く思った。

いざ、帰ってみると、普通の様子の藍に切り出すことができず、結局その後何日も指輪が入った紙袋は俺の部屋に鎮座している。
夕飯を食べている時に切り出そうとしてもうまく言葉が流れて来ない。
いつ言えば良いのか。
こんなに緊張することだったのか。
おとんはおかんに言えたのか。
尊敬するわ、とわざと思考を逸らしたりした。










今日こそ、今日こそ言おう、と意気込んで家に帰った。




「…え…?」





今度こそ、荷物ごと藍はいなくなっていた。








20130211
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