最初は何がなんだかわからなくて、目の前の人達を少し距離を開けて見ていた。
でも、そんなわたしを彼等は大切な仲間だと言ってくれた。
気付けば、わたしにとっても彼等は大切な存在で。
最初のように関わらないで、なんて言えない。




「な、何よ…それ…あなたが本当に逆ハー主だっていうの…そんなはずない!」



わなわな震え、頭を抱えて嘆く彼女。
僕が嫌われ主なわけない、どこで狂ったの、と呟いていると思えば、きっと色の違う瞳でわたしを捉えた。



「あなたのせいね…!全部全部、何もかも…!本当に強い補正を神様にもらったみたいね、でも、僕は『最強設定』だから!何にしたって僕に勝る人がいるわけない!そうだ、あなたを消せばこの世界の歪みが元に戻るはずだわ!そうだ…何で…気づかなかったの、かしらっ!!」




アハハハ、と狂ったように笑いながら近くにあった椅子をこっちに投げつけて来る。
柳さんから離れて、かろうじて避ければ、壁に当たった椅子がバラバラに砕けていた。
…ありえないでしょ。
これが、『最強設定』…?
中二じみている、と冷や汗をかきながら彼女をもう一度視界に入れたら目の前にはさっきよりも凄いスピードでこっちに向かっている椅子。
…避けられない!



「…っ…?」
「…っ藍、どこも当たっていないか?」



目をつぶった瞬間、また柳さんの香りに包まれた。
ドッ、と鈍い音がして少し押される。
…でも痛くないってことは…!



「柳さん!?何で…?」
「少し肩に掠っただけだ、気にするな」
「…参謀…大丈夫なわけないじゃろ、椅子がこんなんなんに…」
「み、見せてください!…右腕、庇わなかったんですか…?」



柳さんはテニスプレイヤーなのに。
当たったのは柳さんの利き腕、右腕だった。
肩は見れなかったけど、腕にも少し当たっていたようで、色が変わっている。
わたしが、避けなかったから。
全国大会が控えている柳さんを、怪我させた。


その中で、最初に声を出したのは椅子を投げた張本人だった。
信じられない、といった表情で口元を押さえている。



「そ、そんなつもりは…!どうしよう…流れが変わってしまったら…消されてしまう…」














その瞬間、ぱぁ、と教室いっぱいに光りが満ちた。
10秒くらいで少しづつ光が消えていってそこに彼女はいなかった。







20120913




「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -