「藍!」



ガタ、と乱暴にドアが開けられた。
わたしの頬をぶつ直前に彼女の手が止まる。
誰だ、と目を開ける前にわたしの体は落ち着く香りに包まれた。



「…藍、大丈夫か…?」
「…や、柳さん…」

「俺もいるぜぃ!」
「藍!怪我とかしてない!?」
「藍が突然いなくなったって聞いてね、皆で探したんだよ」



幸村くんがゆったりとそういうとぞろぞろとドアから入ってくるテニス部レギュラーの皆。
わたしを気遣う言葉をくれて、大丈夫だと言うと安心したように笑ってくれる。




「皆、騙されているわ!!」
「…む、お前は…」
「3年E組の…」
「この子には補正がかかっているの!皆、目を覚まして!!」



眼鏡を取って、叫ぶ彼女。
何言ってんだ、と一歩踏み出した切原くんの前に立ちはだかって、肩を掴む。



「…赤也、目を覚ましなさい?」
「…っ!この女、力強っ…!」



顔を歪める切原くんを見て、慌てて真田くん達が彼女を引きはがしにかかる。



「何なのかな、君は」
「精市…あなたもまだなのね…」
「言っている意味がわからないな、華央、後ろに下がっているんだよ、危ないからね」
「う、うん…」



いつも浮かべている笑顔をしまい込んで、華央を庇うように前に出る幸村くんと、その隣に並ぶ真田くん。



「皆…っ、神田藍、いい加減、無駄だって気づいたらどうなの!?皆を、解放してあげて!」
「…解放?」



怪訝そうにそう小さく聞き返したのは柳さんだった。
ぎゅ、と腕に力を入れてわたしを引き寄せる。



「そうよ、こんな偽りの愛情に満足しているようじゃ本物の愛情は得られないわ!それに、あなた自身の私利私欲の為に彼等を巻き込むなんて間違ってる!」
「お前が何を言っているのか、わからないが…偽り、というのは間違っているな」

「そうだぜぃ、俺は藍と一緒にいたくているんだけど」
「俺もそうナリ、藍は妹みたいなもんぜよ」
「藍には、いろいろ世話になっているしな」
「丸井くん、仁王くん、桑原くん…」



「うむ、その通りだ」
「ふふ、皆良いこと言うじゃないか」







「…これでわかっただろう、藍が、紛れも無く俺らの大切な仲間であることを」





わたしの瞳から、一筋の涙が頬を伝った。






20120913



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