俺には好きな女がいる。
そいつは同じクラスの神田藍って言って、学校中から人気を集めている。
人気を集めているのは見た目だけじゃない、あいつの性格がそうさせているんだ。
そんなやつに俺はガチ恋していて、正直手応えなんて感じたこと無い。


幸村くんだって仁王だって赤也だってあいつの事がすきで、きっと他のやつも藍が好きだ。
でもいくら俺らがアプローチしても藍は全く俺らと打ち解けようとはしてくれない。
流石に気付いているんだぜぃ、藍から話しかけてくれたこと無いってくらい。


最近、藍が変わった。
よく笑うようになった。
俺のおかげだ、と言えれば天才的にかっこいいんだろうけど、明らかに違う。



「藍藍ー!」
「えー何ー…っ!ぎゃー!え!何これ!?」
「藍ちゃん反応良すぎ!かわいー」
「む、虫じゃないですか…!」
「あー藍涙目(笑)それゴムだから(笑)」
「〜!華央ー!」



遠藤達といるときが、藍は一番楽しそうだ。
それと、もうひとつ。
俺らが昼飯に誘っても断らなくなった。
遠藤も一緒に来るからっていうのもあるだろうけど…



「柳さん!こんにちは!」
「ああ、藍か。こんにちは」



何故かあいつは柳に懐いている。
柳もあいつを気に入っているようで、いつも自然に隣に座って食べている。
つまんねえな、と思ったのも最初だけで、慣れてきた今は藍が笑っているからいいか、と見守っている。
柳はいいやつだし、藍は知らねえだろうけど、藍に対する柳の態度は見たことも無いくらい優しい空気だから。
これは誰が見ても両思いだな。
頑張れよ、藍。
え?好きじゃねえのかって?
俺くらい天才的になると好きなやつが幸せそうに笑ってたらそれが一番嬉しいんだよ。



「藍のクラスは外で体育だったんだな」
「うん、柳さん見てたの?」
「ああ」
「俺も遠藤が走ってんの見たよ」
「え!幸村、授業ちゃんと受けなよ」
「ふふふ、つい」
「つい、って…あ、藍それ美味しそう…」
「あげようか?」
「あー…ん、美味し!」
「本当?わたしが作ったんだよ」
「…俺も頂こう」



柳が美味しい、と褒めると嬉しそうに笑う藍はやっぱりかわいい。
赤也は先輩ずりー、って言ってるけどまさしくずりぃな。

とにかく、人生で初めての失恋だ。
俺が隣にいたいとは思うけど、全然悔しかったりしない。
むしろ暖かくなるようなこの失恋はきっと忘れない。
とりあえず帰りにジャッカルに話して慰めとしてなんか奢ってもらおう。
うじうじしてるなんて俺らしくないから。
…やっぱ俺って天才的?




20120903



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