学生の今、私にとって一番嫌いな言葉は間違いなくクラス替え、だと断言できる。

自分で言うのもおかしいと思うけれど、私はそんなに人相の悪い顔はしていないと思う。輪郭はどっちかと言うと丸に近いし、目も吊り上がっているということはない。作り笑いは出来ないというか笑っても自分が思っていたほど口角が上がっていないことは自覚しているけど、それでも普通に話すときには笑える。

とにかく、なんでか理由は解らないけど、なかなか友達が出来ないのだ。

中学のうちはまだ良かった。小学校の頃からの友達が多かったので、周りと打ち解けるのに時間はそこまでかからなかった。それでも他と比べると掛かってしまったけれど。
それでもクラス替えした直後は元クラの人しか話し掛けてくれず、教科書や本を読むでもなくただ机を見つめて誰かの訪れを待ったものだ。なんで昨日までは「知ってる人少なーい」と笑いあった友達は隣の席のこと話し込んでいるのか、ちょ、そこに混ぜてくれよと切望しながら。


問題は、今だ。

高校一年生ってあれじゃないの、ほら、ドラマみたいにキラキラしててすぐに皆打ち解けて素晴らしい先生と出会って、クラス一丸となっていろんなトラブルに立ち向かっていく、みたいな。
どうして入学してそこそこ経ってるのに発した言葉が「あ、はい」だけなのか。




「じゃーはい、隣とペア組んで自己紹介しあえー」


先生ナイス!念願の女子との接触!と喜んだのもつかの間、隣を見ればやたら座高が高い男子だった。いや、長いのは座高だけではなく足ものようだ。見た感じ細そうなズボンを纏った足は、机の底につきそうである。いや、ついているのか?そして机にもたれ掛かっているバッグも長い。…あれはラケバというものではないか。運動部か、確かにその身長は武器になる。未だ体の向きを相手の方にむけていないので目線だけで得た情報からそこまで考える。
さて、そろそろはじめなければいけない。ゆっくりと椅子に横向きに座りなおすと…





なんてこったイケメンがいる





思わず二度見してしまった。きっとサラサラだろう黒い髪も、切れ長の瞳も、すっと通った鼻筋もすべてに狂いがないイケメンがいた。


「やらないのか?」


あー声すらイケメン。ああ、そちらからどうぞと手を出すと、名前から言い出した。ふんふん、徳川カズヤ君ね、覚えた覚えた。ふーん、テニス、の割には肌白いねえ、もしかして下手くそ?…え!せ、選抜だと…!?ごめんね下手くそとか言って。心の中だけで相槌を打ちまくり、自己紹介シートに書き込んでいく。

それから自分も紹介をして、わかって来たことがある。
…この人絶対わたしと同じ類の人だ。
なんだか最初見たときはその美人さにやられたけど、きっとこの人も周りから話し掛けてくれるのを待ってるけどなかなか来ないタイプだよ!



「…なんだか、苗字さんとは仲良くなれそうだな」
「あはは、なんで?」
「だって同じ空気がするから」




…やっぱり!






20120524





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