「なんか本当に高校生活早いんですけど」
「なんやいきなり」



部屋着のラフなTシャツ姿なのにどこのモデルですか、と聞きたくなるような白石さんにわたしは思いつくままの言葉をぶつけ続ける。



「この前入学したと思ってたんですよね」

「そしたらいつの間にか後輩がいて、センパイが引退して卒業して」

「それでわたしたちも引退してて」

「このまますぐに卒業しちゃうんでしょうか」




コーヒーとオレンジジュースを持ってわたしの隣に座ってきた白石さんはテーブルにカップを音を立てずに置くと、せやなあ、と小さく呟いた。




「俺も早かったなあ」
「白石さんも?」
「部活してたらあっという間に大学入試になっててな」
「うん」




今のわたしみたいになった?と聞くと、おん、もちろん、と柔らかく微笑んでくれた。
月並みなことしか言えんけど、今は戻ってくる事はないから楽しむんやで?とおどけたように頭を撫でて言うけど、なぜかわたしはどうしようもなく切なくなってしまって喉の奥がきゅうと痛くなった。



今のままがいいなあ
受験なんてしたくない
勉強もしたくないけど、今の友達と離れたくないなあ




「時間がとまっちゃえばいいのに」



ぶす、とそう言うと困ったように笑ってコーヒーに口をつけた白石さんが




「大学に行っても出会いがあんねんで?俺はなまえと会えたのは社会人になってからやし、今の仲間とは離れてまうかもしれんけど、その分もっとこれから繋がりが増えて行くんや」





その言葉にそういう見方もあるのか、と思った。
繋げたい繋がりはなんとしてでも繋げとけば良い、電話なりメールなりいくらでも方法はあるやろ?と続けていう白石さんに抱きつく。




「お、なんやいきなり。元気でた?」
「うん!部活の友達と、クラスの友達と、白石さんとはずっと繋がってたいから頑張るし、でももっと他の友達もつくるよ!」




その意気や、と抱きしめ返してくれる白石さんにわたしはいっそう力を強くして抱きつくのだった。





20130418

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