双子のお兄さんで、かっこよくて、優しくて。

わたしの好きな人は、そんな人。










浅羽先輩(祐希先輩の方)曰く、わたしが浅羽先輩(悠太先輩の方)を好きな事なんてバレバレらしくて。
塚原先輩には会う度に「頑張れよ」って頭を叩かれるし(塚原先輩はお兄ちゃんみたいで好きだ)松岡先輩もキラキラした目で押しまくれば平気ですよ!と応援してくれる。
ちなみに橘先輩はからかってくるのでとても迷惑です。



でも、皆昼休みにしか先輩に会いにいけないわたしを気遣ってくれたらしく、今日、まさに今、二人だけで屋上にいる。
皆購買に買いに行ってしまった。



「あ!飲み物買うの忘れた!誰かついて来て!」
「俺が行ってあげてもいいよ」
「ゆっきーやさすぃー♪」
「じゃあ俺はここで待ってるよ。めんどくさいし」
「(ちら)俺も行くわ。なんか昼飯足りねえし」
「(か、要くん…!わかりました!)ぼ、僕も行きます!なまえちゃんはここで悠太くんと待っててくださいね」
「な、え、はい…」
「いってらっしゃーい」





塚原先輩が去り際に背中を軽く叩いてきて、見ると不適に笑っていたので、多分そういう事なんだと思う。
せっかくつくってもらったチャンスだ。
何か話さなければ…と思うがこんな時に限って何の話題も出て来ない。





「ねえ」
「は、はい!」
「昨日さ、本屋にいたでしょ」
「いましたけど…何で知ってるんですか?」
「祐希が本屋よりたいからって寄ったら苗字がいてさ、話しかけようとしたら本屋から出て行っちゃったから」




…なんてタイミングの悪い…!
もう少し買う本を悩めば良かったのに!
けっきょく何も買わずに出てきてしまった自分を恨む。



「浅羽先輩は何を買いにいかれたんですか?」
「あーなんかアニメージュ買いにって。保存版とか買うんだよ、あの子」
「あはは、浅羽先輩らしい気がします」




一通りくすくす笑ってからまた話す事がなくなる。
ちら、と横を見るとまだ少し口元が緩んでいた先輩と目があって、慌ててそらす。
あ、感じ悪いかな…
でももうそらしちゃったし…




「ねえ、苗字ってさ」
「はい」
「俺ら兄弟のことどっちも浅羽先輩って呼ぶよね?」
「はい」
「それ、やめない?」



悠太先輩って呼んでみてよ、と何でもないように言われる。
そんな、下の名前で呼ぶなんて…!




「なまえ」
「い、今…!名前で…!」
「うん、俺もなまえって呼ぶからさ、だからなまえも、ほら」



せーので言ってみて、と笑う先輩がかっこよすぎて顔を抑える。





「ゆ、ゆーた、せんぱぃ…」




どんどん元気がなくなって最後の方は聞こえていたか怪しい。
でも悠太、先輩はよくできました、と頭を撫でてくれた。





「なんか嬉しいなーこれからもそれで呼んでね」
「は、はい!」
「あ、祐希のことは浅羽先輩でいいから」
「…はい?」
「いいから。それから要もダメ。春はいいよ、春先輩ってよんでも」




千鶴はー…と空を見上げながら言う先輩。
これって、いい意味で解釈してもいいんだよね…?
ふいにこっちを見た先輩に、今度は目をそらさずにいると悠太先輩は人差し指を口元に持ってきて言った。









「名前で呼ばれるのは、俺だけが独り占めってことで」









20130209