「やば、図書室にいすぎた!」



最終下校時間まで気付かずに読みふけってしまった。
申し訳なさそうに閉館するから、と図書委員の人に言われて気付き、慌てて帰り支度をして今、校舎から出て来た所だ。



「あれ、苗字さんじゃないか?」
「え、あ!徳川くん!…と?」
「ああ、会うのは初めてかな?入江奏多です。よろしくね」
「あ、あの入江先輩…!!」
「どのかわからないけど、たぶんそうかな」
「お話はよく聞いてますー!あ、徳川くん今帰り?」
「ああ、苗字さんも?」
「うん!図書室にいてさ」
「へえ、何を読んでたんだい?」
「徳川くんも知ってると思うよ!昆虫図鑑!」



あれ、冗談のつもりだったんだけど…
二人とも微妙な顔して顔を見合わせはじめている。
流石に普通に小説読んでたから。



「冗談ですよー」
「ああ、それは良かった。どう答えればいいのか戸惑っちゃったから(ちょ、ねえ、君に冗談をいう程仲良いなんて聞いてないんだけど)」
「…本当は何を読んでたんだ?(…)」
「んー、秘密?なんか改めて聞かれると恥ずかしいや」
「それは残念、いつか教えて欲しいな、趣味が広がるかもしれないし(スルー?カズヤ、答えないと肩パンするよ)」
「…」←本当に冗談なのか実は素なのかわからなくて答えられない
「はい!またいつか!先輩達は部活ですよね?お疲れ様です」
「ふふ、ありがとう(あーこれは肩パンどころか顔パンの刑だよカズヤ)」
「…苗字さん、暗いから送って行くよ(顔パンってアンパンマンか)」
「え!疲れてるでしょ?いいよいいよ早く帰って休んだ方がいいよ!」



体の前で手を振り、断ると徳川くんはいや、送らせてほしいと食い下がってきた。
そうだった、この人性格までイケメンなんだった。
この人第一印象がなかなかよく見られないこと以外は非の打ち所のない人だ。



「その、本当に危ないから」
「…!(カズヤに春…!これは先輩として応援するしかないよね!)そうだよ苗字さん、送ってもらいなよ。僕は用事があるから帰るけど。じゃあね」
「あ、引き止めてしまってすいません!」
「いや、呼びかけたのはこっちだからね」



ぼん、と徳川くんの肩を叩いて早足で先輩は帰ってしまった。
…悪いことしたなあ、

肩を押さえた徳川くんが帰ろうか、と促してくれる。



「(明日いろいろ聞かれそうだな…)」
「徳川くん、帰ろうか」
「ああ、そうだね」



徳川くんはわたしの話をいとものように聞きながらさりげなく道路側を歩いてくれた。




イケメンですね本当に!








20121120




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