ここはとある私立学校。
ここにいる人は皆受験して入ったんじゃない。
他の人は持っていない、゛チカラ″を持っている人が入れる学校なんだ。

とは言ってもそのチカラを持っている人は多くなく、普通の人ももちろん入学してくる。
その中にはやっぱり霊的なものが好きだったり、親がそういう職業の人が多く、チカラを持っている人を変な目で見ないので比較的平和である。
むしろ羨ましい、と人が集まっていく。
何故かチカラを持っている人は美男美女が多いから尚更だ。


そういうわたしは何のとりえもない一般の女だ。
特技は目が良い事。
成績は本当に平均的だし、運動もできるわけでも無いし…。
でも、この学校では有名人である、と自負している。

何故かって?
それはね、




「なまえ」



ぽん、と自分の膝を叩きながらこっちを見て微笑んでいる、わたしの彼氏様、市丸ギンのせいだ。
…そこに座れって事?
ここ教室なんだけど、とか授業だから、とか恥ずかしいから、とか断っていたのは最初の方だけで。
先生に「ええですやろ?」と聞けば先生は頷き、クラスの人達はもう何の関心も示さず、そして最後には

「ずっとやってれば恥ずかしくなくなるやろ」

とさらりと言ってのける。
そこからわたしの定位置はギンの膝の上で。
何だかんだで断ることもできないので、毎回乗ってしまっている。
いや、だってギン近いから落ち着くし、頭とか撫でてくれるし、暖かいし…ほら、勉強もちゃんとしてるから…!
そしてわたしは今日もギンの所に行くんだ。
座り方は2パターンあって、ギンの足の間に挟まるようにして座らせられる場合はちゃんと授業を聞く気があるとき。
ギンの膝の上に横向きにして座らせられる場合は授業を聞く気が無いとき。
つまり、ずっとギンがわたしに構ってくれるんだ。
今日は聞く気がないみたい。
今日もかわええなァ、と言われて恥ずかしくてギンの胸に頭を預けて俯くと、くつくつ笑いながら頭を撫でられた。
ワイシャツの首元から手を差し込んで、首や鎖骨を撫でられる。



「く、くすぐったいから…」
「んー?ほな、顔あげ」
「なに」



くいっと顔を上げられて、そのまま顔が近づいてきて、あ、やばいと思った時には遅かった。
覆いかぶさるように口づけられ、にゅるりと差し込まれた舌を受け入れる。



「んぅ、んーっ(皆いるのに!)」
「……はっ…」
「…はぁっギン!いきなりなんで…」
「せやなァ、したかったからしゃあないやろ」
「なっ!」



ほっぺをするりと撫でられる。
ギンは意外に人を触ったり触られたりするのが好きなようで、割とこういうことをよくする。
今も少しつねって伸ばしてみたり、正直若干痛い。
わたしもギンのほっぺに手を伸ばす。



「すべすべでやらかくて気持ちええわ」
「ギンも十分すべすべだよ。羨ましいなあ」
「ほんま?自分ではわからんわ」
「わたしがわかってるからいーよ」
「そうやね、なまえもボク以外に触らせたらアカンよ?」
「うん」



ギンに包まれているような感覚や、優しいギンの声、撫でられている心地良さがすべて大好きだ。
ギンのほっぺを小さくきゅ、と引っ張って、そのあとに首に腕を回して密着するように抱き着く。
…なんか眠くなっちゃった。
なまえ?と耳元でわたしの名前を呼ぶと、軽く頭をぽんぽん叩く。



「眠くなってしもたん?」
「ん、眠い」
「そか、屋上いこか」



ふわ、と体が浮き、ギンが立ったのを知った。
「先生、ボク達抜けるわ」「あ、ああ…」という会話を最後に、人の声が聞こえなくなる。
歩いているからか、程よく揺れているのがまた眠気を誘い目の前にある首筋に額を擦り付けるように顔を埋めた。




「…ほな、寝よか。膝枕したろか?」
「…やだ、くっつきたいから…」
「…ほんまかわええ」



ぎゅうと強く抱き着くと、ギンも苦しくないように抱きしめてくれる。
屋上の温かい日差しを受けながらギンに抱きしめられて寝る。
贅沢してるなあわたし。




「ギンー」
「ん?なした?」
「もっとぎゅー…」
「ええよ、たくさんしたろ」





20121107




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