「え、ベクトル難しいんだけど」
やっと気付いた、水曜の夜。
え、ちょっと待って、だって数学の数井先生(名前から数学出来そうな空気が出てますよね)が「ベクトルは簡単だからー」って何回も何回も言って、説明が終わる度に「な、簡単だろ?」って聞くから何にもしていなかった…!
これは少しやばいんじゃないのかな。
本当に何にもわからないですよこれ。
だってまだ世界史とか化学とか全然わからないのまだまだあるのにこんなところで躓くと思ってなかった!
とりあえず後回しにして、他のやろう…。
「はい、じゃあ最後の問題、苗字黒板に書いといて」
数井!
ふざけんな!
わかるか!
他の問題に当てられた人達はすらすらと書いている。
本当にわからないから…
「苗字さん?」
「と、徳川くん…」
「当たってるけど…」
「わ、わかってるよ」
「…もしかしてわからない、とか…?」
「あ、いや、まあその通りなんだけど」
「そうか、」
ちら、と一回先生の方を見てからもう一度わたしの方を向き直る徳川くん。
何か言おうとしてるのはわかるんだけど、ごめん今それどころじゃないから…!
必死に教科書の例題と教科書を見比べて問題を解く。
わ、わかんないよ…!
「苗字ー、出来たかー?」
「もうちょっと待ってくださいぃ…!」
わたわた焦りはじめる。
あー早く書きに行かないと
す、
「これ、書いてくるといい」
「…!徳川くん…」
「早く行っておいで」
「うん!ありがとうー!」
神だ、神がいる!
いや、知ってたけど。
徳川くんが優しい人だって。
「さっきは本当にありがとう!」
「いや、気にすることじゃないよ。ベクトル、わからないのかい?」
「…あはは、そうなんだーもう全然で」
「俺で良ければ、教えるけど…」
「本当に!?」
超助かります。
今度何かお菓子買って来よう。
今年になってからは徳川くんにお世話になりっぱなしだ。
本当に申し訳ない。
「ああ、」
「夏も見てくれて…本当にいい人だよね!」
「…とりあえず進級はしてほしいから…」
あ、何だかすごい心配されてる…
心なしか最近徳川くんが親のように心配してくれている気がしたが、絶対気のせいじゃない。
心配で、とよく言われる。
ただでさえ細い徳川くんがさらに痩せて行ってしまったらどうしよう…!
ホントごめんなさい!
20121004
とにかく何か意味ないものを書きたかった。