「…なんで雨なんか降るんだ、天気予報のお姉さんは言ってなかったのに…」
「にゃー」
「明日も降るのかなあ、あーホント嫌だわ」
「にゃー」
「……猫がいる」



予報されていなかった豪雨によりわたしのテンションは急降下している中、道端に何ともありきたりというかみなさんも漫画等で一度は見たことがあるだろう、段ボールに入った猫を見つけた。
前足を段ボールのフチにかけてにゃーにゃー鳴いている。
…こ、これはフラグだろうか。
とりあえず持って帰ってきてしまった。



「ようし、まずは君を洗おうかと思うんだけどどうかね」
「…にゃー!にゃ!」
「ははは、異論は認めていないのだよ」



暴れだす猫をなんとかして抑え、風呂場に連れていく。
そうすれば諦めたのか大人しく洗われてくれる。
いい子で助かるよ。
乾かしてみればミルクティーの様な毛はとても手触りがよく、これはどこかの飼い猫かと思ったが首輪も何もついていない。



「君は逃げ出してきたのかい?」
「みゃー」
「そうかあ」
「…にゃ?」
「よし、ご飯にしよう」




聞いてみたは良いがわからなかったので夕ごはんを作ることにした。



「あ!」
「…にゃーあ?」
「君は牛若丸と名付けよう!」
「みゃーん…」
「若様と呼ぶよ」



良い名前である。
これで呼び名は決定だ。
ご飯もできたし、さあ夕食だ。



「若様はやっぱり魚が好きなのかい?」
「…んみゃ、」
「食べるのに忙しいか」
「…」
「さすが若様。食べ方が綺麗でいらっしゃる」



そんなこんなで夕飯を終え、若様を膝に乗せながらテレビを見たりして、終身の時間を迎える。
抱きしめて寝ようかと一緒に布団に入ったらまた暴れだした。
わ、引っ掻くなって…!
こっちも離す気は無いので格闘していると、いきなりぼん、と音がして煙が舞った。
煙が晴れた中にいたのは…




「こ、こんばんは苗字さん…」
「あ、え、白石くん…?」
「いや…若様でええで…」



頬を若干赤く染めた四天宝寺のアイドル、白石蔵ノ介くんだった。
しかも同じクラス。
向こうはどうしたらいいのかわからないようで、視線をあちらこちらにさ迷わせながら、あ、でも女の子の部屋ってあんま見たらあかんやんな、と呟いている。



「…なんか、ごめん、」
「え、なんで苗字さんが謝るん?」
「無理矢理拉致みたいなことしちゃって」
「いや!全然!気にせんで!俺も苗字さんがこういう性格だって知れて良かったし!」
「」
「クラスではあんま喋らん子なんかなーって思っとったけど、意外とおもろいんやね、もっと早く知りたかったわ」



これから仲良くしよな、とキラキラスマイルで笑う白石くんの顔が近すぎてビビった。
思わず布団から出ようとしたが何故か阻止され、余計近くなってしまった。



「…今日あったこと、皆には秘密な…?俺と、なまえだけの…」



だめだこいつ、早く何とかしないと…


頭が真っ白になってそれ以降の事は覚えてないけど、何もなかったと思う。
ま、中学生だしね!
何にもなかった。


ただ、あの日以降白石くんはやたら話しかけて来るようになった。
そして若様と呼ばないと拗ねるようになった。
何でも蔵ノ介か若様と呼ばれなきゃ返事したくなくなるらしい。
じゃあ君次の時間先生に当てられても無視しなよ、と言いたかったがイケメンは強し、そのキラキラオーラは反論を許さないどころか口にさえ出させない効果があるらしかった。


誰が助けて。




20120904


何がしたいんだ。謎。


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