「なまえくんってほんと可愛いよねー!」
「はあ!?可愛くねえよ!」
「そのムキになっちゃうところがかわいー!」
「くそくそっ!」
「肌白いしさー、何気に女子力高いしね!」





まあそれは元女子ですから。
それに外見は良いからね、そりゃキープもしたくなるといいますか。
前は化粧水つけなきゃ肌荒れるわトリートメントやらなきゃ髪がすぐ荒れるわ大変だったけど向日くんの身体はすごいんです。
何もやらなくても肌はツルツル日焼けはしない食べても太らない髪もさらさら。




十五年前、外見もまだ女の子だった私の第二の人生は目を閉じて開けたら知らない女の人が私を抱き上げているところから始まった。
あれ、第二の人生って定年迎えてからとかじゃなかったっけ。
自分が男であるという事実に驚愕しながらもわたしは元気に育って行った。


そして自分がテニプリの向日岳人の立ち位置にいると知ったのが中学一年生の時。




「…自分、名前何て言うん?」
「…向日なまえだけど」
「そか、なまえな。覚えたわ。俺は忍足侑士や。よろしくな」




テニスバッグを肩にかけて初対面のはずなのに馴れ馴れしく頭を撫でてきた忍足侑士が原因だ。
私が私だった時、そして小さい時に夕飯時によく見ていたアニメを思い出させたのだ。
流石に十二年前のことなんか鮮明に思い出せないので深く考えないようにして今日に至る。
というか深く考えたところで思い出せないから解決しなかった。
諦めって重要だよな!




「なまえ、俺テニス部入ろうと思うんやけど」
「うん見たらなんかわかった」
「お前も入らん?」
「んーいーぜ!行こ!」




特に何も考えずジローも入るっぽいし安易にテニス部に入ったのが二年ちょい前。
実力主義とかいいつつなんだかんだ仲間意識のあるこの氷帝で気付けばおれは三年生になっていた。
テニスの知識はあまり付いてないので侑士になんやかんやで任せていたら何とかなった。


さて、今日も部活だ!




「あ、なまえ先輩!」
「おおおーとり!宍戸はいねーのな」
「はい、宍戸先輩は先に部室に行ってるらしくて」
 「そっかーお前も部室行くだろ?」
「はい!」
「一緒にいこーぜー」




「つかさーおれ的にはそこは赤が良かったんだよー」
「ああ、苺とかりんごとかぶどうとかですよね」
「(え、ぶどう?)んーまーそれでさーあれ、何の話してたっけ?」
「付箋の話でしたよ」
「そかー付箋かーおれ付箋ってあんま使わねえんだよなーそんな話してたか?」
「ちょっとわかんないです」



「…なんの話をしているんだ…」
「あ、日吉」
「よ!」
「こんにちは向日先輩」
「日吉何時もより遅くね?」
「少し用事がありまして…、そんな事より話が一部聞こえましたが何の話してたんですか?」
「…それは…」
「んーなんかわかんねえんだよな!」
「そうなんだよ日吉、わからないんだ」
「…」





日吉が黙り込んだために話が途切れてしまった。
さらにため息さえついている。
悩み事でもあんのかな…?
じゃあ言っちまえばこっちも一緒に考えてやれんのに。
とにかくおれを真ん中にして歩いて部室についた。



「あっゆーし!」
「…なまえ、おはようさん」
「おはようってもう放課後だぜ?今まで寝てたのかよ!」
「なまえやないんやから、そんなわけないやろ」




ほら、早う着替えてき?と何時ものように頭をぽんぽんして俺を促す侑士はもうすでに着替え終わっていた。
俺も着替えなきゃ!





「よーっす」
「うおっ宍戸か」
「おー」
「あっ、借りてた漫画だけどよーあれやべえな!」
「だろ?来週新巻でるからそれも貸してやるよ」
「マジ?さんきゅーっ!」

「なまえ」
「侑士もーちょい待ってて!」



侑士が待っててくれてるから何時もより少し急いで着替える。
適当に制服をロッカーに詰め込んでジャージを羽織…
あれ?ジャージジャージ…




「どっこだー…?」
「何が?」
「なーんかジャージねえんだよ…」
「お前昨日持って帰ってただろ」
「あ!そっか!」
「おら、俺の貸してやんよ」




ばさ、と肩にジャージをかけて俺は先行くぜ、とさっさと部室を出てく宍戸は男前だった。
まあモテるんだよな。
跡部とか侑士とかは憧れ?とかの好きが多くて告白されて振られても諦めがいいっていうか上手く行くなんて思ってない奴が多いんだけど、宍戸はガチ恋率が本当に高い。
くそくそ、俺はなんでモテないんだ?




「お待たせ!行こうぜ!」
「おー」


扉を開けて待っててくれた侑士にお礼を言ってコートに行く。
今日は何するんだろ。
侑士も知らないってことは昨日の時点で跡部が言ってなかったって事だから、俺が聞いてなかったわけでは無い。
あ、跡部発見!




「ぅぅうあっとべえええええ!」
「っ!!?(びっ……びった……なまえじゃねえのあぁん?ふっ、今日も可愛いじゃねえの)」
「お前びっくりしねえんだもんおもしろくねえなー!」
「…そうか(してるんだが!しているんだが!!)」
「なー今日何すんの?俺ダブルスやりてえんだけど」
「ダブルスか(よしダブルスかダブルスがやりたいんだな?今日は基礎固めのつもりだったがダブルスにしてやろう。はっ喜びななまえ!)」
「もちろん俺とやろ?なまえ」
「…シャッフルするか。たまには違うパートナーとやることも大切だ」
「だってよ!ゆーし!残念だったなー!まあお前とはまた絶対やるしいいけどな!跡部ありがとー!」
「せやな(なまえ天使)」
「ああ(天使天使天使天使天使天使カメラはどこだどこに置いた)」




そういえば跡部ん家の犬に似たでっかい犬この前見てさー、と繋げると跡部はそうか、とぽふぽふ頭を叩いてきた。
…なんか跡部って第一印象と違って意外に話聞いてくれるし、っていうか相槌とか雰囲気とかがめっちゃいいから近況報告したくなんだよなー!
ちっちゃいことでも褒めてくれるし!













「は?ゆーしと跡部なの?」
「ああ(はてな顔もいいな…いっそ俺の眼球にカメラ搭載してえ)」
「うわー!なかなか見ないペアだC!」
「確かにあんまり組まんなあ…ま、せいぜいお互い頑張ろうや」



跡部忍足とかフェンス越しのファン歓喜じゃん。
けっこう体力ある二人だから余計に短期決戦でいかねえとなー。
軽くジャンプした感じ、今日の調子は悪くない。



「なまえ!」
「任せろって!」



ジローと二人でネット際に出てボレーしまくる。
ジローのボレーがいいコースに入ったのでチャンスボールが浮いてきた。
これ決めなきゃかっこわりいよな!




「ゲーム!」



いい感じにスマッシュが決まって俺らが1ゲームとれた。
すごくね?




「ナイススマッシュなまえ!」
「へへっ!ジローもナイスボレーだったぜー!」
「まじまじ!?嬉C!なまえ、ハイタッチ!」
「いえーい!!」
「いえーーーーい!!」

ぺちん!



次もがんばろーぜ!
このまま勝っちゃおうか!
ジローも今日はテンション高いらしく、きゃっきゃとはしゃいでいる。
俺もあの二人からゲームをとれた喜びでハイテンションだしな!





「跡部…」 
「忍足、何も言うな…」
「…負けてもええかな…俺別に…」
「くっ…」




ネットの向こうでは跡部が額を抑えて俯いてる。
そんなに悔しかったのか?
ふん、まあ次のゲームはとってみろよ!



そうやって調子乗ってたのが悪かった。
それにあんまりやったことないボレーに二人で出て行くスタイルで、周りが見れてなかった。




「ぅわっ!」
「あっなまえごめん!」




思いっきり衝突して俺は飛んでる途中で落ちた。




「わーなまえが墜落した!」
「なまえ、ジロー大丈夫か!?」
「なまえっ!」



血相変えて近寄ってくるジローと跡部と侑士。
ちょっと笑える。
大丈夫だってこのぐらい、と立ったら膝から血が出てた。
しかも結構大量。



「…」
「あ、樺地…救急箱持ってきてくれたの?」
「ウス」
「なまえ、樺地にやってもらってこい」
「おーごめんな」
「気にしなくていいC!」
「なまえ、大丈夫か?歩けるか?」
「そんな重傷じゃねえからヘーキだって!」




コート脇のベンチに座って樺地に消毒してもらう。
めっちゃ手際いい。
怪我する度に手当てしてもらってるから上手くなっちゃったのかな。



「これで何回目だろーなー樺地に消毒くとかしてもらうの」
「…」
「数え切れなくね?なんかなー…先輩としての威厳が保てねえっつーかさー」
「…」
「あはは!めっちゃ困った顔してんじゃん!」




俺が話してる間に樺地はてきぱきと手当を終わらせてくれてた。
それにお礼を言うとまたいつものようにウス、としか言わなかったけど多分怪我しないようにしてください、みたいな事言いたそうな顔してたからこれからは気をつけようと思う。
まあ跳ぶのをやめるつもりはないんだけど。











「今日も疲れたー!ゆーしー帰ろーぜーい!」
「疲れたにしては元気やなあ」
「うっせ!」



ばたばたと歩く俺とは対照的にゆったり着いてくる侑士。
いきなり指さされてネクタイ曲がってる、と教えられたので直そうとしたらその手を止められた。



「まったく、しゃあないなあなまえは」
「いや自分でできるし」
「まあまあ…っと、これでええか」
「ありがとー!」



ネクタイくらい結べんとな、とかみをぐしゃぐしゃにしてから小さく笑ってまた歩き出す侑士に慌ててついて行く。



「ゆーしっ!俺腹減った」
「どっか寄るか?」
「アイス食べたい!」
「アイス…気分じゃあらへん」
「えー!じゃあ何がいい?」
「サゴシキズシ」
「それただの好物じゃん!…え、何でそっち曲がんの?」
「アイス食べに行くんやろ?こっちやん」
「いいの?」
「もちろん、ええよ」
「やったー!ゆーしありがとー!」



歓喜余って抱きついても難なく受け止めてくれるのはきっと俺が何回も何回も同じことをしているから。
だからいきなり抱きついてもしっかり腰に回される腕とかいきなりやなあとかいいながらも俺の髪をさらさら撫でるその手つきも慣れた。




「なまえはほんまに軽いなあ」
「へへっほら、早く行こうぜ!」
「そんな急かさんでもわかっとるって」




さっき転んだんやから、注意せなあかんで、と言いながらもちゃんとさっきより足を早める侑士と一緒に今日もまた氷帝学園で一日を終えた俺は買い食いに走るんだ。

なんつうか、前も楽しかったけど今も十分楽しいからいいかな、ってことだ!












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遅くなり、本当に申し訳ありません!
全然厚かましくなんてないですよ!!
本当に本当にうれしいです!
なんとなく書いたネタが、紫蘭さまに気に入っていただけたようで今回はしっかり考えて書いてみた結果、今までにないほどに長くなってしまいましたがいかがでしたでしょうか?
これからも待機組をよろしくお願いいたします。
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