こんな再会
プロローグ
バスケの王子様をパラパラと読みため息をつくのを抑えながら学校に行く。
ちなみにまったく見た事もないような内容だった。
どうせなら黒バスとかになってれば良かったのに。
わたしが通ってるはずの学校とは違うのに、もう見慣れてしまった通学路をとぼとぼと歩く。
朝練の無い生徒が学校に行くにはまだ早い時間なので誰にも会わない。
クラスの友達は
テニス部の皆は
華央は
柳さんは、
わたしを覚えているのだろうか、?
あんな別れ方をして、次の日(?)にのこのこと登校して会うのもどのツラ下げて、という感じだけど、皆に初対面のように反応されるのも嫌だ。
気付かれない?
話しかけたら嫌な顔される?
それともまたあの状態?
それだけは絶対に嫌だ。
「とりあえず…テニスコートに…」
正門を通って校舎に入らずにテニスコートに向かう。
遠くからでも見える、聞こえる。
皆がテニスをしているのが。
柳さんと別れて、意識がとんで、起きてから来たからまだ体感的には一日も経ってないはずなのにこんなにも懐かしい。
鼻の奥がツンと痛んだ。
「…藍…?」
穏やかで低い、大好きな声が聞こえたと思ったらわたしの身体は暖かい体温に包まれていた。
「…柳さん」
「藍なのか、」
「はい、そうです柳さん…!」
はい、と答えた瞬間に強くなった腕の力は少し苦しいけれど、もっと、もっと抱きしめて欲しかった。
後ろから抱きすくめられていたので抱きしめ返す事ができず、ただ柳さんの腕に自分の腕を添えると柳さんはわたしを一旦離して今度は正面から抱きしめてくれた。
背中と頭に回った腕はこれでもかというほどに柳さんにわたしを押し付けていた。
なんて事はなく。
「は…?」
初めて聞いた柳さんの心底意味がわからないという顔。
そしてわたしもテニスコートにいると思っていた柳さんが後ろから現れて情けない顔を晒した。
「あ、柳さんだ」
「藍…だろう?」
「はい藍です」
「お前、元の世界に戻ったんじゃなかったのか?」
「そのつもりだったんですけど、朝起きたらまたここにいて」
「全く意味がわからない」
まあ、また会えただけで今は良いだろう、とわたしに近づいて来て頭をぽんと叩いた柳さんはわたしを覚えてくれていた。
それが嬉しくてへら、と笑うと何がおかしいんだ?と柳さんも柔らかく笑って聞いてきたので何でもないですよー、と言っておいた。
「…藍はまた転入生扱いなのか?」
「どうなんでしょうか、わたしも全く予想がつかなくて…」
「今日、立海には一人転入生が来る。もしかしたらそれが藍ではないかと予想していたが外れたようだな」
「?何でですか?」
「ほら、あいつらもお前の事をしっかりと覚えているようだ」
あいつら、と指差した先にはこっちを見て固まるテニス部の皆がいた。
そして硬直が溶けた瞬間どばばばーっ!とこっちに駆け寄ってきてなんでいるんだ!?と聞いてきた。
わたしが聞きたい。
そのままぐだぐだしていると朝練の時間が終わってしまった。
申し訳ない。
柳さんに部室前で待っていてほしい、と言われたので待っていると一番最初に着替え終わった柳さんが部室から出てきたので一緒に教室まで向かった。
自然に取られた手は指を絡ませて握ってくれて、かなり恥ずかしかったけど嬉しかった。
柳さんて意外とスキンシップ好きですよね。