神の子の絶対不可侵領域

一人目:男装最強少女





「…へへっ、やっと認めてくれる気になったんだな!」
「…それはやってみてから決める事さ。時間もないしワンセットでいいよね?」
「おう、十分だ!」





いつもは肩にジャージをかけている幸村くんだけど今日はやってない。
相手の子がやっているからだ。
「あいつやってんじゃん。俺もうあれやんのやめようかな」といいながら最初からユニフォームでコートに向かった。






「俺が勝ったら俺の言う事全部信じてほしいんだ。それで俺がお前らを全国優勝させてみせる!」
「だからそういうのは試合に勝ってから言ってくれるかな」



サーブはあげる、と幸村くんがリターンをするために位置につく。
夕凪さんは自信ありげに微笑んでからエンドラインの上に足を置いた。
ボールを二三回つき、高くボールを上げる。




「…はぁっ!」
「フットフォルト!」



ばこんっ!!


「…え?」




審判が高らかにフォルトを告げた。
ちなみに審判は切原君だ。
隣にいる柳さんがなかなかやるな、と呟いたのでサーブがはやいね、と答えるとそれもそうだが、と続けた。




「あまりフットフォルトはとらないのだが、あいつも幸村に勝ってほしいんだろうな」
「んーでもわたしも幸村くんに勝ってほしいかな」
「それは俺もだ」






「…んだよ、そのフットフォルト?って」
「あ?その足がライン踏んでるっつってんだよ」
「…そっか」
「はやくセカンド打てよ」




二回目のサーブはファーストサーブと同じくらいの速さで今度はきっちりと入っていたらしくラリーが始まった。
夕凪さんのボールは全て強く打ち込んできていて、わたしには幸村くんが防戦一方、というように見えた。
でもそんなに押されているわけではないんだと思う。
確かに攻めているのは夕凪さんだけど幸村くんも辛そうにボールを返しているんじゃない、どんなボールがきたってすんなり返している、気がする。




「ふぅん、幸村もやっぱ上手いんだ、な!」
「…!?」




とてもテニスをしている時に聞く音とは思えないような音がして幸村くんのコートにボールが決まる。
女子(彼女は認めていないけど絶対そうだと思う)とは思えないパワフルな打球だと思った。
あとわたしはテニスをしたことがないのでなんとも言えないけれどもそれでもとても強い打球を打つようには見えないフォームだった。
ここまで…とは思えない、を何回も使ったけれどそれほど違和感がありまくりだった。


幸村くんも驚いているようで、コートに残ったボール跡をじっと見つめていた。


試合は最初こそ拮抗していたけれど、徐々に幸村くんが押され始めて結局は負けてしまった。
普通に考えて、男女の差もあるしその、私から見ても綺麗とは言い難い打ち方や何度か間違えていたのか切原くんに注意を受けていた彼女が数字の上では幸村くんを圧倒したという事実が信じられない。




「…俺の、勝ちだ」
「……ああ」
「わかったろ?お前ら、弱いんだよ。だから青学にも全国でリベンジできない。でも、未来は変えられるんだよ。俺が、この立海大付属を全国優勝に導いてみせる!」




突如語り出した夕凪さん。
十分強いと思う幸村くんたちを弱いと評した挙句これからの練習メニューを託してほしいと言い出した。
柳さんを見つめると珍しく困った顔、というか若干面倒臭そうな顔をしていた。
そして私の頭をぽんと叩くとコートの中に入って行った。



「貴様、何を考えているのだ!たる」
「約束を守らないことこそ、たるんでいるんじゃないのか?」
「…メニューを考えるとお前は言うがもう既に俺たちのやるべきことはデータに

「そんなものじゃ足りないんだ!俺が言っているんだから間違いない」





その後も暫く討論をしていたけれど彼女は口も達者らしく、テニス部の練習メニューは彼女が考えることになったらしい。







「精市!これ今日のメニュー!」
「ああ、部室に置いといてもらえるかな。そしてなんで名前を呼んでるのかな」
「えーだって精市の教室のがちけえんだもん!な、このまま昼ここで食ってい?」
「それは無理かな。俺約束あるし」
「なら俺も混ぜてよ!」
「それも無理かな」





そして幸村くんが付きまとわれるようになった。
幸村くんが表情は崩さないまでも目線を合わせずに全てを却下して行くのを間近で見ていると、どうしていいかわからなくなったけど、それに対してめげずに、というか気にしてもいない様子の夕凪さんもどうしていいかわからない。

日が過ぎるに連れて真田くんがやつれている気がするけど、柳さんに言ったら気のせいじゃないか、と言われたから多分そうかもしれない。






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