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君にいえなかったことがある


「シロップ、私…













アメリカへ行く」









行かないで








うららが18歳になったばかりのある日。
俺は突然、彼女からそう告げられた。
頭が真っ白になったのを覚えている。


アメ…リカ…?


『本格的に女優の勉強をしたいの』



なんでだよ


なんでそんな…




しかも、出発は一週間後だと彼女はいう。




離れたくない

そばにいて欲しい




そう思ったが、俺の口からは、

『そうか…がんばれよ』


としか出てこなかった。






うららの夢は知っていた


だから、いつかこんな日が来ることは分かっていた


でもこんなに早かったなんて…






あっという間にうららの出発の日。



俺は何を言えばいいのかわからない


うららは何と言って欲しいんだろう



空港で、みんながうららに別れを告げるが、俺は何も言えないでいた。


「…じゃあ、そろそろ行きます。ありがとうございました。」


そういうとうららは、

『シロップ、これ…』


と俺を呼び、あるものを手渡した。


「手紙…?」


「うん。私、アメリカで待ってるから…だから…返事、書いて…きっと届けてね…!」


「うらら…」


『絶対だよ!』
と目に涙を溜めながらも笑顔でうららは言った。




「あぁ、約束する。お前も、いつでも手紙書けよ。」



そういうと、うららは微笑んだ。
そして、一度もふりかえることなく、旅立っていった。










君に言えなかったことがある


行かないで / 君と離れたくなかったこと






END