(2/10)page
君にいえなかったことがある


タクシーから見える景色が、だんだん速度を増して、見慣れたものから、見慣れないものに変わっていく。

俺は外を眺め、この一年を、そしてチームメイト達のことを思い出していた。



弱小で人数もそろっていなかったドルフィンズに入り、清水や小森、そして沢村を誘って、商店街チームと試合をしたこと。
合宿に行ったこと。
デッドボール恐怖症になったこと。

今思えば、よくやったものだと思う。

清水や沢村との出会いは最悪だったし、何度も喧嘩だってしたのに。

気付けば、大切な仲間になっていた。


アイツらがいなかったら、ドルフィンズは横浜リトルに勝てなかったかもしれない。


デッドボール恐怖症になった時、『ぶつけてもいいから投げろ』と言ってくれた。
『横浜リトルに勝ちたい』と言う夢を叶えようと、がんばってくれた。


思い出が次々と溢れ出して、
目に涙が滲んだ。



沢村は、出会った頃はイジメっ子で嫌なやつだった。でも、センターとして、また、ピッチャーとして、がんばってくれた。
二回戦の戸塚西リトルとの試合は、アイツのおかげで勝てたようなものだ。


小森は、気が弱いイジメられっこだったが、素晴らしいキャッチャーだった。
試合でもたくさんヒットをうち、活躍した。






そして清水。
アイツは、俺の唯一の女友達だった。
アイツがいなけりゃ、ドルフィンズは解散してたかもしれない。

そりゃあ最初はむかつくヤツだったけど、すごく野球を好きになってくれた。清水がいなかったら、小森や沢村だって入らなかっただろう。

アメリカに行って、腕にひびをいれられたこと。
合宿で大喧嘩したこと。
女の子なのに、アザだらけになってキャッチャーをやってくれたこと。
どれもいい思い出だった。





みんなには、すごく感謝してる。

今まで、ありがとう。
















ごめんな









必ず、帰ってくるから。





君に言えなかったことがある

ごめん / 君に謝りたかったこと



END