(7/10)page
未来予想図


(遅いなぁ…弥彦くん…。)

燕はキョロキョロと辺りを見渡す。
今日は赤ベこの仕事が昼までなので、昼から一緒に出かける約束をしていたのだ。

(2時には迎えにくるって言ってたのに…)

すでに2時20分。5分や10分くらいの遅刻はいつものことだが、さすがに20分もとなると心配になってくる。

(もしかして、何かあったんじゃ…!)

燕はオロオロと赤ベこの前を行ったり来たりする。
と、小さな小石につまづき、転んでしまった。

「いたた…。」

顔をあげると、手が差し出されていた。

(弥彦くん…?)

逆光でよくみえないが、弥彦ではないようだ。

「大丈夫?」

「あ、うんっ…。ありがとう!」

そういうと、彼はニコッと笑った。

(あれ…?この人…どこかで…)

ジッと彼を見ていた燕は『あっ』と声をもらす。

「あなた…弥彦くんのお友達の…!」

「え…?あ、君、赤ベこの…!燕ちゃん、だ!」

近くにあった赤ベこと燕を見て少年は思い出したように言った。

「僕は塚山由太郎。よろしく。」

そういうと、由太郎は右手を差し出した。
燕はワタワタしながらにぎりかえした。

「わ、わたしは…

「三条燕ちゃんでしょ?」

燕はキョトンとして由太郎をみた。

「どうして…?」

「弥彦からよく聞いてるよ。」


ニッコリと意味ありげに笑う由太郎。燕は弥彦がなんと言ったのか心配になった。




話をしているうちに2人はすぐに仲良くなった。

「ところで、こんなところで一人で何してたの?」

「あ…えっと…弥彦君と約束してて…」


と、ふと辺りを見渡すと…

「弥彦君!」

「弥彦?」

弥彦が息を切らしながら駆けてきた。

「わりぃ、燕っ!稽古が長引いて…って…

由太郎っっ!?

「よぉ〜弥彦!」

由太郎はニッコリ笑って、手をヒラヒラさせた。

「おまっ!なんで…!」

「今さっきついたんだ。ちょっと寄ろうと思ってな。」

『ビックリしたか?』
と、由太郎は笑う。

「んで、神谷道場に行こうと思ったら燕ちゃんが転んでてさ。」

それを聞くと、弥彦は大きな溜め息をついた。

「お前…また転んだのかよ?」

「だ、だって…」

また燕がオドオドし始めたのを見て、由太郎が口をはさむ。

「オイオイ、もとはといえば、お前が遅れたのが悪いんだろ?燕ちゃん、ずっとお前を心配して待ってたんだぜ?」

「…う゛っ…。わかったよ」

言葉に詰まった弥彦はそっぽを向いた。
そんな弥彦に、由太郎はボソッと言った。



『あんな可愛い子待たせて…ボヤボヤしてると俺がもらうぜ?』


「な、何言って…!?」

顔を真っ赤にして怒鳴るが、由太郎はニヤリと笑っただけだった。
燕は頭にクエスチョンマークを並べていた。


「…っ!ほら、行くぞ燕!」

「え、うん…!」

「あ!なぁ、弥彦、燕ちゃん!」

「あ゛あ!?何だよ!?」

明らかに不機嫌な弥彦に苦笑しながら、由太郎は聞いた。



「俺も一緒に行っていいかな?」





10分後、燕達は3人で街の中を歩いていた。

はじめは猛反対だった弥彦だが、
『俺に勝つ自信ねェのか』
と由太郎に言われ、もちろん黙っているワケがなく、仕方なしに一緒に行くことになったのだ。

「2人ともごめんなさい…。わたしのせいで…」

そう、もともとは、燕の簪を買うために来たのだ。
弥彦が用事で行けない妙に
『かわりに一緒にいって、燕ちゃんに似合う簪選んだってェな』
と頼まれ、2人で来るはずだった。

「燕ちゃんは悪くないよ。遅れてきたコイツが悪いんだから。」

そういって、由太郎は弥彦を指差した。

「な、突然帰って来るお前が悪いんだろうが!」

「はぁ?はるばる会いに来てやったってのに、何だよ、その態度は!」

「誰も頼んでねーよ!」

「何ィ!?」


(仲良いなぁ…。)

また喧嘩をはじめた2人を見て、燕は微笑んだ。






「わぁ…。綺麗…!」

店に飾ってある簪を見て、燕は目をキラキラさせた。

そんな燕に見とれる弥彦。
しかし、ハッとして、視線をそらした。由太郎がニヤニヤしているのに気づいたからだ。




「どうしようかな…。」

燕はまだ悩んでいた。自分じゃ似合うものがわからない。


「燕ちゃん、これはどう?」

そういって、差し出された簪には、綺麗な花の絵がかかれていた。

燕は髪を軽く結って、その簪をさしてみた。

「可愛いよ、燕ちゃん。」

「ほ、ほんと?これにしようかな…?弥彦君、似合う?」

「…。」

弥彦は黙っていた。
似合っていなかったワケじゃない。むしろすごく似合っていた。でも…
由太郎が選んだ簪だということが気に入らない。

そんな弥彦を見て、燕は簪を外して由太郎に渡した。

「ごめんね、わたしには、大人っぽすぎるみたい。」

「そっか。」

困ったように笑う燕に、由太郎は肩をすくめた。

「弥彦!いつまで拗ねてんだよ。」

「す、拗ねてなんかねェよ!」

顔を赤くして、弥彦は言い返す。
そんな弥彦に由太郎は溜め息混じりに言った。

「なぁ、お前、燕ちゃんの簪選んでやれよ。お前が一番燕ちゃんといるんだから、何が似合うかわかんだろ?」

「…なっ!?なんで俺が…」

「ほらまたそうやって…燕ちゃんが困るだろ。だいたい、今日お前が来たのは、燕ちゃんの簪を選ぶためじゃないのか?」

隣でオロオロしていた燕が口をはさむ。

「ゆ、由太君!もういいよ…」

「なんで?燕ちゃん、弥彦に選んでほしいんでしょ?」

「え、」

弥彦が驚いて燕を見ると燕は真っ赤になっていて、弥彦もつられて、顔が赤くなった。

「あ、あああの、弥彦君…!えっと、その…〜!」

燕は焦って言葉が出ない。そんな燕を黙って見ていた弥彦は、一つ簪を手にとって渡した。

「これがいい。」

「…蝶々?」

赤や青の蝶がかかれた綺麗な簪だ。
燕は顔を輝かせ、お金を払いに行った。


あれからすぐに由太郎は
『俺、剣心達のの土産買いに行くから、先帰ってて』
と、人混みに消えた。

「…弥彦君、今日はありがとう。」

帰りながら、燕が微笑んだ。弥彦はポリポリと頬をかき、言う。

「いや…俺も…悪かったな。ずっと怒ってばっかで。」

「ううん。やっぱり仲良いね。弥彦君と由太君。」

「…どこが!?」

「それに、今日きづいたんだけどね、
由太君って…なんだか、弥彦君に似てる気がするの。」

「はぁぁぁあ!?ないないないない!!!絶対似てねぇよ!!」

憤慨して否定する弥彦に、燕はクスクスと笑った。
そんな燕を見て、弥彦はつぶやいた。

「お前…強くなったな。」

「え…そうかな…。」

「おう。」

『あんまり泣かなくなった。』と弥彦は少し照れながら言った。

「だって…薫さんと約束したの。『強い心を持つ』って。
それで、決めたの。わたしも頑張ってる弥彦君を支えるって!」

「え…!?」

燕は『えへへ』と照れて笑う。

「それで…ね、いつかわたしが、弥彦君をしっかり支えられるようになったとき…弥彦君の隣にいれるぐらい、強い女の子になったときに、この簪…つけるね。」

「燕…!」




「さ、早く帰ろう!弥彦君!」
「あぁ!」




(俺も、お前に似合う男になるように努力するよ。

…だから、そん時は…)








未来予想図

(いいか、由太郎がなんか誘ってきても、2人でいくなよ!?俺に言えよ!?)
(?うん…。)




END



あとがき


しゅん様、いかがでしたでしょうか…?
長いわ、話が意味わからんわ、グダグダだわでヒドい作品になってしまいました…。
どうもすみません!
ヤキモチの相手、オリキャラにしようか迷ったんですが、由太郎君に出てもらいました。
この子もすきですよ〜♪
弥彦と由太郎のやりとりは、言葉がポンポン出てきて、楽しく書けました。
こんな作品でよければ、持って帰ってやって下さい!
返品ももちろんOKです。

そして、ちょっと早いですが、もうすぐ1周年ですね!おめでとうございます!

これからもよろしくお願いします(^O^)