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夢のままで終わらせないで


「…うらら…」

優しい声で私を呼ぶのは、誰?

「うらら」

「シロップ…?」

そうつぶやくと、まわりが急に明るくなり、正面には、彼が。

「シロップ!」

彼の顔を確認すると、私はホッとして笑みをこぼした。
すると、シロップも微笑んだ。

が、すぐに真剣な顔になる。


「…?シロップ?どうしたの?」

「あのさ、うらら…」

「なぁに?」


急に黙ってしまったシロップに、うららは首を傾げる。





「俺、……だ。」


「え?」


よく聞き取れなかった。まわりは静かなのに…

「シロップ…ごめんね、聞こえなかった…」


そういうと、シロップは一つ溜め息をつき、今度は大きく深呼吸した。


「うらら!」

「はいっ!?」

急に大きい声だすから、少し驚いた。しかし、次の言葉にはもっと驚いた。










「俺…お前が好きだ」







ジリリリリリ…
少女のベッドの上で、目覚ましがうるさく鳴り響いている。
しかし、彼女はもう起きていた。と、いうか、目覚ましがなる10分前に飛び起きた。

長い金髪の少女。彼女の名は春日野うらら。
うららはまだ頭の中が混乱していたが、目覚ましの音でハッとなり、音を止めた。しかし、そこからは動かず、頭から布団をかぶっていた。


(ゆ、夢かぁ…。)

うららは小さく溜め息をついた。
ホッとしたような、がっかりしたような複雑な気持ちになる。
そして、冷静になった途端、うららはボンッと爆発しそうなくらいに赤面した。

彼、シロップへの気持ちには、自分自身気がついていた。
シロップが、好き。
その気持ちには。


(…でも、あんな夢見ちゃうなんて…)

シロップの夢を見れた嬉しさより、彼への罪悪感のほうが大きかった。

(…私、最低だ…シロップに合わせる顔がないよ…!)

今日は日曜日。ナッツハウスの大掃除だ。仕事がないのでナッツハウスに行く約束をみんなとしていた。
しかし、うららはそれを思い出しますます落ち込んだ。


朝食も喉を通らず、パンを無理やり押し込む。

そしてとぼとぼと家をでて歩き出す。

行きたくないと思うときほど、時間がたつのが早いのは何故だろう。
気がつくとナッツハウスの前にいた。






「こ、こんにちは!」

「あら、うらら!来てくれたのね!」

「くるみさん!」

トコトコと駆け寄ってくる彼女、くるみにうららはニッコリと笑った。

(大丈夫…!笑わなきゃ…)

「もうみんな来て、それぞれの役割決めたの。うららはここの一番奥の部屋よ。」

「はい、分かりました!」

くるみに何も悟らないように、うららは元気に返事をする。

「じゃあ、よろしくね。」





(…ここね。)

ガチャッ

「失礼しま…!」

扉をそっと押してあける。と、そこには…

「よぉ、うらら」






ガチャンッ

思わずうららは、部屋の扉を閉めた。

(な、なんでシロップが…!?ど、どどどどうしよう〜!聞いてないよ〜!)

扉に寄りかかり、うららはまたパニックを起こしそうになる。
すると突然、扉が開かれ、寄りかかっていたうららはそのまま後ろに倒れこむ。

「きゃっ…!?」

「うわ!?」

トサッ

危機一髪のところで、シロップがうららを支える。

「大丈夫か?うらら。」

ギュッと目を閉じていたうららは、恐る恐る目をあける。
すると、目の前にはシロップの顔が。

「し、しししシロップ!」

みるみるうちに、うららの顔が赤く染まっていく。

『ご、ごめんなさい!』
そういうと、うららは慌てて飛び退いた。

「いや、大丈夫だけど…お前はケガないか?」

「だ、大丈夫っ!」

まともにシロップの顔が見れず、うららはうつむいた。

「…?まぁいいや。早いとこ掃除終わらせちまおうぜ?」

「…うん」









ドキドキと胸がうるさい。
うららはいまだに、顔が赤く、うつむいていた。。

(あ、あの置物もふかなきゃ…)

棚の上の置物をとろうと、うららは精一杯手を伸ばすが、届かない。
と、突然、左側からぬっと手が伸びてくる。

「ほらよ。」

シロップはうららに置物を渡す。

「…ありがとう」

「おう。」

微笑むシロップに、うららはまたドキリとしてパッと目をそらした。
そんなうららに、シロップは首を傾げた。

「…?うらら、お前どうしたんだ?」

「…え?何が?」

相変わらずうららは目をあわせようとしない。

そんな彼女に近づき、シロップはうららのうでをつかんだ。

「…!シロッ…」

「…うらら…お前、もしかして…」





ドキリ…







(ば、バレた…!?)
















「…熱あるんじゃねぇのか!?」

「…へ!?」

予想外のシロップの言葉に、うららは目が点になる。
固まるうららにシロップはどんどん近づき、ピトッと、うららのおでこと自分のおでこをくっつける。

「…〜っ!」

「んー、熱はなさそうだな」

シロップの行為に、うららはますます顔を赤くする。

(し、心臓が…!)





「し、シロップ!」

「へ?」

突然声をだしたうららに、シロップは少し驚いた顔をする。

「ごめん!私、お、お茶のんでくる!」

「え?お、おい!」

まるで逃げるように一階へおりて行ったうららを、シロップは見つめていた。






それから少しして、うららは帰ってきたが、シロップと距離をおいていた。
ついにシロップも我慢できなくなり、うららに声をかける。

「あのさ…うらら…」

「あ、ご、ごめんシロップ!私、下に用事が…」

そう言って、また逃げようとするうららの手を捕まえる。

「!シロッ…」

「また逃げる気かよ」

「…!」

シロップは真っ直ぐにうららを見つめる。うららの目には涙がうっすらと浮かんでいる。

「俺…お前になんかしたか?なんかしたんなら謝る。」

うららはふるふると首を振った。

「なら…なんで避けるんだよ。なんで目ぇ合わせてくれねぇんだよ…なんで…」

切なそうにシロップはうららをみる。





「なんで…笑ってくれねぇんだよ…」

「シロップ…」


シロップはそっと手を伸ばし、優しくうららを抱きしめた。

「…うらら…」

耳元で聞こえる優しい声は、あの夢と同じ…

うららはゆっくりとシロップの背中に手をまわす。

「シロップ…!」



「うらら…俺は…」












「お前が好きだ」



うららは目を見開いたあと、幸せそうに笑った。

「私もだよ…シロップ。」




夢のままで終わらせないで











END

オマケ



その後


「ところで、なんで俺を避けてたんだよ?」

「えっ…ひ、ヒミツ!」

「なんで?」

「なんでも!」

「教えろよー!」

と、ラブラブな2人と…




「早く掃除してくれないかしら…。っていうか入りにくいんですけど…」

ドアのそばで呆れ顔で立っているくるみの姿があった。



オマケEND


お待たせしました、悠沙様!

いかがだったでしょうか。
シロップにドキドキのうららということだったので、ドキドキさせてみましたが…
別人ですね…
スミマセン。

告白話をあまり書かないので悩みましたが、ちょっと直球すぎたかもしれませんね…!
でも、アニメでもこれくらいやってほしいと思います!

では、文句、苦情は受け付けます!
リクエストありがとうございました!