いつもより気温が高めなある日のナッツハウス。
うららは俺の隣で台本を読んでいた。
今回は結構難しい役らしく、頭を抱えて悩んでいる。
「どんな気持ちで台詞言えばいいんだろ…ここ…」
そんな一人言が気になり、つい演技なんてわかりもしないのに相談に乗ろうとした。
「…どれどれ?」
俺が台本を覗き込もうとした瞬間、そうだっ!と急に立ち上がり、一階のナッツの所に走っていった。
「ナッツー!ちょっと演技の相談があるんですけど、いいですか?」
「別に…構わないが…」
あぁ…少しでもいいところ見せれそうだったのに!
…そりゃ、俺なんかが相談に乗っても演技なんてわかんないし、ナッツはたくさん本を読んでるし、相談したら人物の気持ちがわかるかもしれないけど…
…あのふたりのツーショットは意外な組み合わせ。
だけどやけに楽しそうに話声が聞こえるから気にくわない。
俺は気になってうららの声のする方を見ていた。
あいつの気持ちはわからないけど、ナッツはこまちが好きなはずだし…問題ないよな…?
「シロップ!どうしたの?何見てるの?」
突然のぞみが目の前にひょっこりと顔を出す。
「のぞみ!野暮なことは聞かないの!うららが気になっているのに決まってるでしょ?」
「あぁ…そっかぁ…」
あぁ…そっかぁ…じゃねえよ。
「…ちょっと待て…なんで俺が見ているのがうららに決まってんだよ!」
「だって、シロップ、うららが好きなんでしょ?」
仲間の中で、うららと1位2位を争う天然なのぞみがケロリと俺の気持ちを言ってきた。
いや…当たりだけど…
「ち…違うって!」
「だって、いつもうららを見てるじゃない。」
「……っ!」
のぞみに加勢するようにくるみも口を挟んできた。
図星なだけに一瞬何も言えなかった。
「一体何の話してるんだ?」
よかった!
ココならこの状況から何とか救い出してくれる!
そんな期待の眼差しでココを見たが…
「ココ様!シロップが自分の気持ちに正直にならないんです!」
「あぁ…うららのことかい?」
え…?
「そうなんだよ!シロップったら、全然素直にならないんだから!」
「だーかーらー!俺は…!」
「なんの話をしてるの?」
こまちとりんとかれんもやってきた。
こまちの笑顔が天使に見える。
頼むから救い出してくれ。
「こまちさん!聞いてくださいよ!シロップがちっとも素直にならなくて…」
「もしかしてうららさんの話?」
「はっ?ちょっ…えぇっ?!」
正直、驚きを隠せない。
なんでみんなしてうららの話って決めつける?!
何?!俺の気持ちって筒抜けなのか?!
「いい加減素直になったらー?」
「そうね。いい?シロップ、芸能界には素敵な男性がたくさんいるのよ?うららがいつその中のひとりに気持ちを向けるかわからないんだから、早めに素直になって想いを告げたらどうかしら?」
りんやかれんまで同じことをいう。
「だから、違うってば!俺はうららが好きとかそんな気持ちはないって!」
「嘘ついたって見ればわかるわよ!」
「そういえば放課後、たまに男子校の生徒がうららに声掛けてたっけ…ラブレター渡したり…」
「…なっ!それ本当か!!」
思わず反応すると、みんなニヤニヤしている。
「やっぱり気になるんじゃ〜ん」
「素直に告白してきたら〜?」
「誰かに取られちゃうわよ☆」
あぁ…早くこの場から逃げたい…
恥ずかしさのあまりに顔が熱くなる。
とにかく否定を続けた。
「あのなぁ!何度も言うけど!俺はうららのことなんて…」
「メー♪」
肩に乗っていたメルポが突然胸ポケットを漁る。
そこには大切に持ち歩いている写真が…!
ヤバい!
のぞみ達に見られたら…バレる!
「ちょっ!待てメルポ!」
「メー♪」
みんなに写真が見えるようにメルポは逃げ回る。
小さくてすばしっこくて、メルポが捕まらない。
「だああっ!メルポ!待てってば!」
「あ…うららの写真だ」
「やっぱりねー!」
「動かぬ証拠よ!シロップさん♪」
「白状するしかないぞ!」
あぁ…バレた。
諦めるしかない。
そう思った時だった。
「ありがとうございます。ナッツのお陰でいい演技ができそうです!」
げっ…
うららが戻ってくる。
慌ててメルポを捕まえて、写真を取り上げて胸ポケットに隠した。
ギリギリセーフ…
ちょうどうららが戻ってきた。
「あれ…皆さん一ヶ所に集まって何してるんですか?」
「…ちょっとね♪」
後ろでクスクスと笑い声か聞こえる。
「…?…あれ?シロップ顔赤いよ?大丈夫?」
「あ…今日は暑いからだっ!」
「…そっか!気温高いよね!」
ニッコリ微笑むうららは何も知らない。
とりあえずなんとか誤魔化したものの、俺はその日から毎日、仲間のニヤニヤした応援に悩まされている…。
おわり。
詩亜様からいただいちゃいました!
か、可愛すぎますよね!
思わず一人でニヤニヤしちゃいましたw
シロップの焦りっぷりが最高です!
ありがとうございました☆
← →