「シロップ!わ、私…好きな人ができたんです!」
・・・は?
ナッツハウスに来て、開口一番、うららは俺にそう言った。
「…ふーん、そうかよ。」
当然俺は面白くない。
なんでわざわざそんなこと俺にいうんだよ。
俺が一緒に喜ぶとでも思ってんのか、コイツは。
ところが、話はまだ続く。
「それでね、シロップにお願いがあるの。」
「…なんだよ。」
嫌な予感がする。
「その人に贈り物をしたいから、一緒に選んでくれる?」
…予感的中。
「やだ。」
「えぇ〜!?どうして!?」
なんで俺が、うららと知らないやつがくっつく手伝いをしなきゃいけねぇんだよ。
「ココやナッツがいんだろ?」
「だって、2人とも忙しいし…」
「俺だって忙しいんだよ。」
冗談じゃねぇ。
「お願い…。シロップじゃなきゃイヤなの…!」
「う゛っ…。;」
俺と違って素直なうらら。そんな彼女の素直な言葉に俺は弱い。
「・・・。」
「…っ!わぁーったよ!行きゃーいいんだろ、行きゃー。」
「やったぁ〜!ありがとうシロップ!!」
「…ったく。」
こうして、俺とうららは次の日の土曜日にショッピングに行くことになった。
次の日。俺は待ち合わせ場所に行きながら、複雑な心境だった。
うららと出かけられるのは嬉しいけど、やっぱり知らないやつ…しかもうららの好きなやつのプレゼントを選ぶのは、かなり抵抗があった。
(15分も前に来ちまった。)
よっぽど楽しみだったんだな。と、自分にあきれながら、待ち合わせ場所である時計塔の下へ行くと・・・。
「あ、シロップ!」
「…うらら!?」
彼女はすでにそこにいた。
キレイな髪を一つに結い、団子にしている。
そして、花柄で黄色のワンピースを来ていた。
「わ、わりぃ…。待ったか?」
「ううん、私もいま来たところ♪楽しみで早く来すぎちゃった。」
『えへへ』と笑ううらら。
俺は嬉しかった。
うららも楽しみにしてくれていたんだ。
俺は微かにうららに笑いかけた。
「うーん、これなんかどう?」
「そうだなぁ…俺は…」
30分後、俺とうららは、店前であれこれと話し込んでいた。
正直はじめは、贈り物は適当に選んでやろうかとおもったが、あまりにうららが真剣なので、俺も真剣に考えた。
「じゃあ、これは…?」
「うん、いーと思うけど。」
「シロップは、これ好き?」
「俺は…好きっちゃ好きだけど、あんまりつかわねぇなぁ。」
俺がそういうと、
『じゃあ違うのにする!』
と言って違うものを見始めた。
俺の好みに合わせてくれている。
なんだか嬉しかった。
「はぁー♪良かったぁ、良いのが買えて!」
オレンジに染まる公園のベンチに座ったうららが背伸びする。
「そりゃあ良かった。」
「うん!ありがとぉ、シロップ!」
「いや…俺も楽しかったし。」
そういうと、うららは心底嬉しそうに、ニッコリと笑った。
心臓が、跳ねた。
「しっかし、そいつは幸せ者だな。こんなにうららに想われて。」
(うわ、なにいってんだ、俺!)
口が勝手に動く。
「どんな…奴なんだ?」
嫌だ。聞きたくない。
しかし、うららはちょっと驚いたのか、少し考えたあと、ゆっくり言った。
「えっと、ね、私と同じで、お仕事してるの。とても不器用で、自分の気持ちをなかなか素直に言えない人。でも、いつもなんだかんだいいながら私の力になろうと頑張ってくれるの。」
「・・・そう、か。」
楽しそうに話すうららを見て、本当にソイツが好きなんだと思った。。
「でも、すごぉく鈍いの!」
「・・・そりゃあ、つらいよな、気付いてくれないと・・・。」
俺もつらい。
「そう。
今日だって、せっかく勇気出してショッピングに誘ったのに、何にも気づかないんだよ。」
「・・・へぇ・・・・・・って、えっ!?」
うららのあまりに突然すぎる告白。頭がついていかない。
「…え…えぇっ!?」
パニックになっている俺を見て、うららはクスッと笑った。
「シロップだよ、『好きな人』って。」
「うらら…。」
「…お返事は?」
「…んなの、決まってんだろ。…俺もうららが好きだ。」
とびっきりの笑顔がはじけた。
END
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