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真夜中の散歩


ある夏の日の夜。うららは、ベランダで1人、静かに泣いていた。

またオーディションに落ちてしまったのだ。
いつまでもクヨクヨしていても仕方ない。分かっていても、やっぱり落ち込む。

ナッツハウスでも、みんなに心配をかけまいと、笑っていた。が、やはり、あの人の目はごまかせないらしい。

「やっぱり泣いてるロプ」

「…!シロップ!?」

うららは驚いて声を上げた。

「しーっ!バレたらどうするロプ!早く背中にのるロプ!」

「え!?」


ワケが分からぬまま、シロップに急かされ、うららはパジャマ姿で乗り込んだ。






「うわぁ〜!気持ちいー!」

「ロプ!」

夜の風に、うららの髪がなびく。下に見える風景に、うららは目を輝かせた。

「昼と夜とでは、景色が全然違うロプ。」

「うん!夜もいいね!」

ニコッと笑ったうららに、シロップは微笑んだ。

「ところでシロップ、これからどこいくの?私、パジャマのままなんだけど…」

「ついてからのお楽しみロプ!」

「…?」






「ついたロプ。気をつけておりるロプ!」

「う、うん。」

うららはそっと足をつける。
そこは、観覧車の頂上だった。

「う…わぁ…!すごく…綺麗…」

そこから町を見下ろす。明かりがキラキラ光り、幻想的だ。


「だろ?」

『ポォン!』と音がして、シロップは人型になった。

「うん!」

「元気になったか?」

うららはハッとして、シロップを見つめた。

「何でもひとりで背負いこもうとすんじゃねぇよ。泣きたいときは言えよな。俺…で良ければそばにいてやるから」

照れくさそうにいうシロップに、うららは微笑んだ。







真夜中の散歩