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始まり


大綾





部活の帰り道、大河と綾音は並んで歩いていた。

「いよいよだね」

「あぁ。」

「明日かぁ…」

「あぁ。」

「…。」


綾音は、ぷうっと頬を膨らまして大河を覗き込んだ。

「清水君!」

「…何?」

大河は面倒くさそうに答える。

「清水君って…緊張しないの?」

「…なんで?」

「え、だって…」

綾音は
『うーん』
と悩みながら、ゆっくり話す。

「だって、一年生のときからずっと落ち着いてるし…
緊張して固まったりとかもしないなぁって思って。」

『私なんてすごいドキドキするのに』
と、綾音は笑った。




「緊張…するよ」

「え?そうなの?」

「しないわけないじゃん。」

綾音は少し驚いた。

「…でも、」

「?」

「『練習は裏切らない。』っていうじゃん。俺は…やれるだけはやった。」

その言葉を聞いて綾音は、人一倍厳しく練習していた大河を思い出し、微笑んだ。


「そうだよね、先輩も、一年生も…頑張ってたもんね!」

「…うん」

綾音は大河にニコッと笑った。




「頑張ってね!清水キャプテン!」









僕らの夏が始まる
(君のためにも、頑張るよ)