(2/19)page
以心伝心


「はぁ…。」

ここは私、春日野うららの控え室。今、夜の10時です。
やっとお仕事が終わって、気がついたら外は真っ暗でした。
今日はマネージャーさんが急用で休みなので、帰りは一人…
正直、夜道を一人は怖いです。
でも、たまにはいいかなって思ったり。




最近、忙しくて、ナッツハウスに行っていません。
行きたいけれど、いつもこの時間になっちゃうから。
たくさんお仕事がもらえて嬉しいんですけど、たまに寂しくなります。学校に行っても、お昼前にはお仕事で学校を出なければならなくって…
のぞみさんたちや、シロップにもここ二週間あえてません。

私のことを忘れられたら、どうしよう…

そんなことを考えてしまいます。

私なんて必要ないかもしれない。
私は、その程度の存在…

どんどん悪い方に考えてしまって、やっぱり不安になるんです。

寂しい、寂しい、サビシイ…

みんなに、会いたい



シロップに、会いたい。

でも、こんな時間に行ったらきっと迷惑だよね。

「…はあ…。」

とぼとぼと歩いていると、一階に見知った影。

「し、シロップ!?」

「よぉ。」

…夢?夢かも。
私はほっぺをつねる。

「…何してんだよ…」

呆れ気味の顔で私をみてくるシロップ。

「ゆ、夢かと思って…」

「はぁ?」

「だって、まさかシロップが会いに来てくれるなんて…」

そういうと、シロップは瞬時に顔を赤く染め上げた。

「ばっ、俺はだなあ!のぞみ達に無理やり…」

『無理やり』と聞いてズキンと胸が痛む。
そうだよね、シロップが私にすすんで会いに来てくれるなんて…

「そうだよね、ゴメンね、シロップ。」

「え…」

『ありがとう』の言葉よりさきに『ゴメンね』がでてきてしまった。

「私…、私、すごく寂しかった。みんなや…シロップに会いたかった。だから、シロップが来てくれて嬉しかったよ。」

「…。」

「ありがとう、シロップ。」

困らせて、ゴメンね。

シロップは黙ってしまった。





「あの…さ、うらら。」

「…?」

シロップが頭を掻きながら照れくさそうに言った。

「さっきの、あの…嘘だから。」
「え…?」

「俺も…その、お前、どうしてんのかなぁって思って…」

「…!」

「俺も…アイツらも…お前に会いたかったんだよ。」

驚いた。シロップの言葉で、私の不安は消え去った。

「お前がいないと、みんな静かでさ…。俺達にはお前が必要なんだよ。」

まるで私の心が読めるかのように、シロップは不安をつぶしていった。

「ありがとう、シロップ…」






あなたが私と同じことを考えていた。

私の気持ちをあなたがわかってくれた。

たったこれだけで、私は幸せになれるのです。





以心伝心