「シロちゃん!お花見しよう!」
「『日番谷隊長』だ。…花見?」
『うん!』と、桃はニコニコ笑った。
「ちょっとだけ休憩しよう?あたし、今日非番なの。お仕事手伝うよ!」
そう笑顔で言われると、断れない。冬獅郎はしぶしぶ頷いた。
「はぁ!終わった終わった♪」
「・・・。」
さっきまで大量にあった書類は、桃の『お花見やりたいパワー』によってあっという間に片付いていた。
「さ、いこいこ!…そう言えば乱菊さん、まだ帰ってこないね?」
「…サボりだ。」
「あ、そうだ。さっき市丸隊長とお酒のんでたよ?」
「…もうほっとけ。」
冬獅郎は溜め息をついた。
「ほら!シロちゃ…「『日番谷隊長』だ。」…日番谷くん!桜、スッゴいキレイだよー!」
「あぁ。」
『お前もな』なんて、言えない。
照れ隠しに、可愛くない事を言ってしまう。
「はしゃぎすぎだろ。子供じゃあるめーし。」
「もう!いいじゃない、こんなときぐらい!」
『いつもいつも日番谷くんはー!』と、頬をふくらませる桃を見て、冬獅郎はフッと微かに笑う。
「ねぇ、日番谷くん、おなかすいてない!?」
「…ん。そういえば、昼飯まだだっけな…。」
そういうと、桃の顔がぱぁっと明るくなった。
「私ね、ルキアちゃんに教わって、お弁当作ってみたの!現世の食べ物とかも教えてくれたんだよ。…食べてくれる?」
「あぁ。」
「良かったぁ!作ったら、一番にシロちゃんに食べてもらおうって決めてたの!」
『藍染よりさきに持ってきてくれた。』
そう思うと、頬が緩みそうだ。
「はい!これだよ!」
『じゃーん!』と言って、いくつかの大きな弁当箱の蓋をあける。が…
「…雛森。」
「なぁに?」
「これ…」
「…まずそう?」
「いや…そうじゃなくて…」
中身の半分が卵焼きなんですけど!!!!
「卵焼き…多くね?」
「シロちゃん好きだったよね?」
いや…そうだけど。
この多さ、好きとかいうレベルか?
「あぁ…。サンキュー。」
とりあえず、冬獅郎は一切れつまんで口へ持っていく。
それを桃は緊張した面もちで見ていた。
「ど、どう…?」
恐る恐る尋ねる桃。
「…うめぇ。」
「ほ、本当に?良かったぁ。」
「・・・。」
(子供の頃、食べた卵焼きと同じ味がする…。)
冬獅郎の胸に懐かしい思い出が蘇った。
桃もニコニコしながら、嬉しそうに弁当を食べていた。
「ごちそうさまでした!」
結局、大量にあった卵焼きは、全て冬獅郎がたいらげた。
「ねぇシロちゃん、」
「…なんだよ。」
お茶をのみながら、桃が冬獅郎に話しかける。
「私…。これからも毎年、シロちゃんに卵焼き食べさせてあげるからね!ずぅっと!」
「…あぁ。」
「だから、毎年、2人でお花見しようね!」
「…あぁ。」
でも、
それって、ある意味プロポーズじゃね?
少年は心の中で突っ込みながらも嬉しそうに微笑むのであった。
END
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