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君の瞳にうつるのは


「わぁぁあすごい!」

たくさんの人達と混じって、隣から聞き慣れた高い声が聞こえた。

「すごい…すごいよ、大河君!」

ずいっと顔を近づけ、俺を覗きこむ我が彼女、鈴木綾音に、俺、清水大河は思わず後ずさる。

「みて!こんなに広い!綺麗!」

「…あー…ハイハイ。見てる見てる。」

はしゃぐ彼女を呆れ気味に見ながら軽く流す。
俺だってこの球場に入ったとき、すごく感動したし、すげえと思ったけど、綾音があまりにはしゃぐので、そっちが心配で気が気でなかった。

「本当にご招待ありがとうございます、お姉さん!」

「いいって、いいって。」

「…招待してくれたのは姉貴じゃなくて先輩だろ」

「う゛」

言葉に詰まる姉と呆れた目で彼女を見る俺に、綾音は困ったように笑った。

「ほら、席無くなっちゃいますよ。座りましょう、お姉さん!大河君も!」

「そうだねっ。ほら、大河も!」

「へいへい」














「いっけぇぇえ!打てー!」

「頑張れぇーっ!」

俺をはさんで姉貴と綾音は声を張り上げる。
(コイツ…だんだん姉貴に似てきた気がする…)
そう思いながら綾音を見ていると、

「…?なぁに?」

「や、別に」

「…??あっ、ほら、大河君も、メガホン!」

「…いや、俺はいいよ…」

「そう?」

綾音は頭の上にクエスチョンマークを並べている。
俺が球場に目を戻したその時だった。


「あ」



「吾郎!」

「「茂野先輩!」」

8回の裏、茂野先輩がマウンドにあがった。
姉貴や俺達が見に来てることを知っているからなのか、凄まじい気合いで、相手のバッターから次々と三振を奪っていく。
正直…悔しいけどかっこいい。


「すごい…!かっこいいなぁ、茂野先輩!」

そう言って、目をキラキラさせる綾音をみて、ムッとする。

「でしょでしょー!」

「はい!『自慢の彼氏』ですね!」

「やだもー、綾音ちゃんたらぁ。」

「・・・」

俺を無視してキャピキャピとはしゃぐ二人に、イライラが募る。茂野先輩がかっこいいなんて、もう思わなかった。

「でもすごいですね、本当に…
…ね、大河君!」

「…べつに」

綾音が不思議そうに俺を見た。

「…どうして怒ってるの?」

「べつに怒ってない」

「怒ってるじゃない」

「……」

すると姉貴が俺をニタニタした顔でみた。

「ほらほら、綾音ちゃんが自分を見てくれないからって拗ねないの」

「な…!べつに拗ねてなんか…!」

そういいながらも、顔が熱くなるのがわかる。綾音はキョトンとして俺を見て、くすくす笑った。

「大河君…妬いてるの?」

「違っ…〜〜っ!!悪いかよ!」

恥ずかしくなって、目を逸らす。

「…悪くなんか、ないよ」

「……」

「大河君、」

「…?」

ちょいちょいっと手招きされ、耳を近づけた。

「あのね、」

(茂野先輩もたしかにかっこいいけど…私が一番大好きなのは、大河君なの)

ガタガタッ!ガタタッ!!

「ちょ、何してんの、大河…大丈夫?」

「・・・」

頬を染めながらも笑う綾音をポカンとして見つめる。
なんだか無償に悔しい。
このままやられてばかりでもいられない。

「綾音、」綾音がしたのと同じように、彼女を呼ぶ。

「…」

綾音は少し戸惑ってから、ゆっくりと耳を近づけた。

「あのさ、」



君の瞳にうつるのは
(…俺以外見ちゃだめ)
(…えっ…??)
(このバカップルが…)






END








あとがき

リカさん、お待たせしてしまい、スミマセンでした…
しかもリクエストの内容にそえてない…!
うぁああスミマセン!

吾郎の試合も観戦…ってほとんどしてないし…
祝福もしてもらってないし…

とにかく、ヤキモチやく大河君を書きたくて、こうなりました(>_<)


こんなものを押し付けてしまって、ごめんなさいっ…

そしてリクエストありがとうございました!
これからもよろしくお願いします♪