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たぶん、彼らは僕らの味方さ



真夏の太陽、雲ひとつない晴天。
上がる気温、沸きあがる歓声。
そう、まさしく夏、なのだ。
甲子園の出場権を得られる地区予選が間近に迫った7月後半。
この季節、練習にばてる部員は多く毎日続くうんざりする暑さには誰もが苦しんでいた。

「あちー」

この部のキャプテン清水大河も例外ではなく、この暑さと練習にやられていた。

彼は特に暑さには弱いのだ。それは部員みなが知っていることで。

練習中では人一倍がんばっている大河だが、休憩となると人一倍暑さに苦しむ大河。
夏の風物詩ともなった光景だ。

「もーがんばりすぎだよ?」

木陰で休んでいた大河に声をかけたのはマネージャーの鈴木綾音。
野球部の天使とでも表現できる、可憐で純粋な彼女はみんなに気を配る優しい少女だ。
彼女は比較的暑い季節にも対応できているらしい。

もう一人のマネージャーは汗をかきながら動き回っている。
ちらりと彼女の顔を盗み見た。
心配そうな表情で、ん?と首をかしげている。
自分の視線に気付いたらしい。

「あんた、暑くないの?」

「暑いよ。でも清水くんたちほどは暑くないと思う。」

まじめそうに言う彼女を見て噴出してしまった。

彼女はなによう!と言って怒っているが。

可愛かったのだ。

自分の姉や、そこらへんの美女と比べられないほどに。

いつまでも笑っている自分に彼女はどこがおもしろいのよ!と怒りは増したらしい。
それからまたずっと笑っていると怒るのはやめて不機嫌そうな表情をしている。

「おーいお前らなにやってんだ?」

顔をひょこっと覗かせたのは茂野だった。
今はメジャーで活躍している投手。

そしてこの学校の卒業生でもあるのだ。

「大河?」
 

こちらは清水の姉、薫。

よほど暑いのか、短い丈のスカートをはいている。
この2人がそろうとろくなことはない。
それは今までの経験で十分に知っている。

…そして大河は嫌な予感がした。
こんな暑い中寒気がしたような気がしたのだ。


「おーう、もしかしてガールフレンドといいとこだったか?」

「あらーゴメンナサイねー!」

予感は当たったらしい。これは完全にからかっているのだ。
そして全く謝る気のない2人。
それどころかにたにたと実に嫌な笑い方をしている。

この騒がしい空気を嗅ぎつけてかほかの部員がやってきた。

「キャプテン、鈴木さんを彼女にしちゃったんですか!?」

「抜け駆け禁止です!!」

口々にずるいなんてことばが聞こえてくる。

「それはな「絶っっっ対にありません!!」

否定の言葉を言おうとした彼をさえぎったのは紛れもなく綾音。
彼女は顔を真っ赤にして全力で否定している。
そう、全力で必死に、だ。

最初大河は絶句していたが、しだいに大河の周りにはよどんだ空気が漂い始めた。

とぼとぼとグラウンドの隅に行き、『の』の字を書いているらしい。
他の部員はさっきまでずるいといっていのに、今度は可愛そうに…と同情の声が聞こえる。
さすがにこの出来事には茂野も薫も同情するしかなかった。
そしてこの事態に綾音は1人首をかしげるのであった。
太陽と空は何食わぬ顔だ。

自分の気持ちは知っているのか、知らないのかなんて分からないけど。
それでもきっと、こんな哀れな自分に味方してくれるだろう。
だって夏なのだから!
(たぶんだけどね。根拠はない。)
End




夏!な小説をお願いしましたw
いじける大河がツボです(笑)

ありがとうございました☆