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April fool


「マネージャー。」

「…?なぁに、清水君?」











「俺、アンタのこと好きなんだけど。付き合ってくんない?」







「…ぇえっ!?」









April fool



4月1日の朝、部活へ行く途中たまたま一緒になった2人は、部活の話をしながら、通学路を歩いていた。

そんな時に急に大河から告白され、綾音は驚いて固まってしまった。
鞄を落とした事に気づき、慌ててひろい上げる。



(ど、どうしよう…!こ、これは夢!?だよね…。だって、あの清水君だよ?)

綾音は軽くパニックになっていた。








(やっぱり困ってる…。)


大河は綾音をチラリと見た。
そして、小さな溜め息をつく。
今の告白はほとんど本気。
彼女が中学の時の先輩を好きなのは知っていた。
でも、少し期待はあった。
自分を選んでくれるんじゃないかっていう。






「あ、あの…。清水君、わたし…」

綾音がそう言い掛けたとき。突然、大河が笑い出す。


「し、清水君…?」

「アンタ…本当に面白いね。」

「へ…?」


ポカンとしている綾音に、大河は笑いながら歩き出す。


「冗談だよ、冗談!」

「じょう、だん…!?」

「そう。今日はエイプリルフールっしょ?」

「…。」

「からかっただけだよ。」

「…。」


返事がないので、振り向くと、綾音が目に涙を溜めて、こっちを睨んでいた。


「うそ…だったんだね…?」

「え、」

大河は冷や汗をたらす。
綾音は涙をながした。

「わたしのこと、好きじゃないのね?」

「え!いや、違…マネージャー…!」

「もういい。清水君なんて、知らない!」

「ちょっと待てって!」

先に行こうとする綾音の手首をつかんで引き止める。

「ごめん…悪かったよ…。ちょっと、軽率だった。」

「…かったの。」

「…え?」


よく聞き取れなかった大河は、聞き返した。


「…嬉しかったの。清水君が『好き』って言ってくれて」

「…マネージャー…」

「あはは、なにいってんだろね、あたし。はずかしっ。」

(ん?ってことは…)

「マネージャー。」

大河は綾音に向き直った。


「…?はい?」


「アンタさ、俺のこと好き?」

「…〜っ!!」


すぐに真っ赤になった綾音に、大河は思わず笑みをもらす。

(なんだ…。)



「マネージャー。」

「こ、こんどは何ですかっ!」






「俺さ、マネージャーが好きなんだよね。
付き合ってくんない?」


そういうと、綾音は一瞬目を見開き、すぐに疑いの目になった。

「また…からかってるの?」

「…違いますけど」

(ちょっとショック…)

「だって…信じられないよ!」

顔を真っ赤にして困ったように綾音が言う。
すると大河は少し考えて、
『じゃあ…』
といいながら、顔を近づけ、触れるだけの口づけをした。


「…これでどう?」

「…〜っ!!!清水君のバカ!」

「はぁ?なんで?」

「誰かに見られてたらどうするの…!?」

「別にいーじゃん?」

「よくないよ!」








そして、この現場をバッチリ目撃していた渋谷によって、2人の噂は瞬く間に広がったのだった。




END