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恋の熱は40℃


だるい。



頭がボーっとする。



そして痛い。



…最悪。




















恋の熱は40℃













ある暑い日の朝のことだった。

「37.3℃…」

体温計に書いてある温度をみて、綾音は驚いた。

「どうりでからだがダルいと思った…。どうしよ…、試合前なのに…。」





今日は夏の大会が始まる3日前。
聖秀野球部はみな、朝から最後の追い込みで忙しく練習に打ち込んでいた。


「お、おはようございます…。」

「あれ?遅かったッスね、マネージャー!」

「鈴木先輩が遅れるなんて、珍しいですねー!」

「ご、ごめんね!今準備するから!」

からかい気味に話しかけてくる後輩達に悟られまいと、笑顔で話した。

しかし、そんな綾音を大河は何も言わずジッと見ていた。





そして、練習が終わり、授業が始まった。が…


(…ダメ。頭がまわらない…)
ガンガン痛む頭をたびたび抑える。
熱も朝より上がっているのがわかった。

それでも綾音は、誰にも気づかれないように、しっかり顔をあげる。




そして昼休み。

「…マネージャー。」

隣から聞こえた声に、綾音はパッと振り向く。

「な、なぁに、清水君?」

「…大丈夫?」

「…え?何が?」

「何がって…。あんた、弁当ほとんど食べてなかったじゃん。」

「今日は…お腹すいてないの」

笑顔で返し、逃げるように席をたった。

「…私、図書室いってくるね。」

「あ、ちょっ…」





階段の所まで来たとき、めまいに襲われた。


「…っ!」

(落ちる…!)


綾音は目をギュッとつぶった。
その時、





ガシッ





「…!?」


恐る恐る目をあけると、怪我をするどころか、階段に投げ出されてさえいなかった。
腰に手を回され、しっかりと支えられていた。


「…清水君!?」


そのままの体制で、床に座り込む。


「…っの馬鹿!何やってんだよ!」

「ご、ごめんなさ…」

「俺が気づかないとでもおもってんの!?」

ハッとして大河をみる。

「当たり前だろ?アンタのこといつも見てるからわかるんだよ!」

「…!清水君…。ありがと。」

「…ったく。」

大河は大きなため息を一つついた。

「…だから目が離せないんだよ。」

「…えへへ。ごめんね…。」

意味を分かっているのか分かっていないのか、綾音は困ったように笑った。













「…で、あの…清水君…?」

「…え?」

「えっと…あの、て、手が…」
言われて、綾音の腰にまわしたままの自分の手をみた。

「…っ!ご、ごめっ!」

「だ、大丈夫!」

真っ赤になりながら2人は立ち上がる。

(今のでまた熱が上がった気がする…)

「…とりあえず、今日はもう家帰んな。送ってってやるから。」

「え、清水君、授業は…?」

「部活にさえ出られればいいの。」

「え〜?」




2人はクスクス笑いあった。










恋の熱は40℃






次の日、ある噂が流れ、それを聞いた2人が真っ赤になっていたのは言うまでもない。





END