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いっしょに


「…清水君!」




夏の大会の初日、大河がキャプテンになってから初の公式試合でもある今日、大河は少し緊張した面持ちで聖秀高校への道を歩いていた。

『キャプテンになって初めてだから』
と、気合いを入れようと、手には新しい黄色のリストバンドをしていた。



突然後ろから呼び止められ、大河は少しドキリとした。



振り向くと、我が野球部のマネージャー、鈴木綾音がトコトコと走ってきた。





「お、おはよう!」



「…おはよ」



彼女も緊張しているらしく、声がどもり気味だ。


思わず大河は苦笑する。



「朝から元気ッスね、マネージャー」



「当たり前だよ、清水君!」



綾音の目は燃えている。



「絶対勝つんだから!」



「試合すんのは俺らだけどね」


そういうと、綾音は少し複雑な顔をした。




歩き、話しながら、2人の緊張感はだんだん薄れていった。








「あ、そうだ!」

突然綾音は立ち止まり、かばんの中から青色の小さな包みを取り出した。
そして、『はい!』と大河に渡そうとするが、大河のリストバンドに気づき、固まった。
受け取ろうと手をさしだした大河はキョトンとして包みと綾音を交互にみつめる

そして、綾音の視線に気が付く。





「…これ、昨日買ったんだ。」


「…そ、そう…」



綾音はうつむくと慌てて包みをかばんになおそうとしたが、それはできなかった。


大河が綾音の手から包みを奪いとったのだ。


「何これ?」



「だ、だめ、清水君!返して…!」



「やだね。」



大河は綾音の目の前で、包みを開いた。


すると中から、オレンジ色の大河と同じリストバンドが出てきた。






「これ…俺に?」



途端に綾音は顔を赤らめて口ごもる。



「ち、ちがうよ!それはその…私が自分で使おうと…」

「ふーん?自分用なのになんで俺に渡そうとしてたの?」


「そ、それは…」


「プレゼント用だし」


「・・・・。」


「メモまでついてんじゃん。」



「・・・!」


大河は、『清水君へ』と書かれたメモをひらりと見せた。



綾音は更に顔を赤くしたあと、溜め息をついた。





「…もう、いいの。」



「は?」



「私が勝手に買って、かぶっちゃったのがいけないの…。ごめんね、清水君。困らせちゃって…」



「・・・・。」



(一番困ってんのはアンタだろ。)


(泣きそうな目で、何言ってんだよ)


大河は綾音をじっと見つめる。

「わたし…みんなと一緒に戦ったり、できないから…」


「…バッカじゃねーの?」


「・・・え?」


大河の言葉に綾音は驚く。


「一緒に戦えなくったって、アンタは俺達の仲間だよ。」


「清水君…!」

綾音の顔が明るくなり、大河もホッとする。





「これ、もらってもいい?」



「う、うん…。でも…」



綾音が相変わらず申し訳なさそうな顔をするので、大河は少し考えた後、黄色のリストバンドを外し、オレンジのをつけた。

そして…




「はい。」


「…えっ!」




黄色のリストバンドを綾音の手に持たせた。



「し、清水君!これ…」



「交換。これで問題ないっしょ。」



「いいの…?」



不安げに尋ねる。



「うん。」



「ありがとう!」



綾音はニッコリ笑った。



「いーえ、こちらこそ。
…試合、頑張ろーぜ。」



「う、うん!」











END