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少年少女に幸あれ!


それは、篠岡が米をといでいたときの事。ひょっこり顔を出した泉によって爆弾が投下された。

「しのーかってさ、阿部のこと好きだろ」




篠岡は思わず米を洗っていた手を止め、顔を上げた。

「な、なんのこと…デショーカ…」

いつものように切り抜けようと、篠岡は泉にへらっとした笑顔を向けた。
しかし、チーム一観察力があり勘が鋭い彼の目は欺けないようだった。

「隠さなくたっていいのに」

「………」

「辛くねーの?言っちゃえばいいのに」

「…泉くんは、何も知らないからそんなこといえるんだよ」

珍しく暗い口調の彼女を、泉はじぃっと見つめた。

「…私の仕事は、みんなが気持ちよく野球できるようにサポートすること…
私のせいでチームの雰囲気変になったりとか…絶対嫌だから…」

「自分がどんなに辛くても?」
「………」

泉の問い掛けに、篠岡は小さく頷いた。
そしてハッとしたように再び心配そうな顔を上げた。

「泉くん…もしかして他のみんなも気づいて…?」

「いや、それはねーと思うよ。栄口くらいはわかんねぇけど」

篠岡は泉の言葉にホッとしたような表情を見せた。

「……そっか。…あは、さすが泉くん。鋭いね」

「まあ……いつも見てたから」

「ぇえっ!?私、そ、そんなにみてた!?」

赤くなり慌てふためく篠岡を見て、泉はぷっと吹き出した。

「…しのーか可愛いな」

「〜〜〜っ!!!」

さらに赤く染まった篠岡は、ゆでだこのようになりながら泉を睨んだ。

「、からかわないでよ!」

「ハイハイ。んじゃ、俺練習戻るわ。」

帽子を被り直しながら立ち去ろうとする泉を、篠岡が呼び止めた。

「あ、泉くん!今のこと…」

「心配すんなよ。誰にもいわねぇから」

「……ありがとう」

「でも、」

足を止めた泉は、くるりと振り向き、意地の悪い笑顔で笑った。

「俺、しのーかの恋は応援したりしねぇから」

「え」

「むしろ邪魔してやるぜ」

「ええっ!?」

笑いながら泉は再び篠岡に背を向け、練習をしに駆けていった。

そしてその頃篠岡は

(もしかして…泉くんも阿部くんを…!?)

というありえない勘違いをしていた。



少年少女に幸あれ!




END