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二人の日常





「ほ、本田!」



『あ?清水じゃねーか。どうした?』



帰り支度をしていた吾郎は声をかけてきた幼なじみを見つけ、手を止めた。



「あ、あのさ…」



なんだか歯切れがわるく、もじもじする薫に、吾郎は眉をひそめた。



『…?おい、トイレなら黙っていけよ』



「違うし!だから…その、」



『なんだよお前らしくねぇな』


「こ、ここにさ、あんたが前から行きたいって言ってたバッティングセンターのコインがあるんだけど…」



そういう薫の持つ袋には、三十枚ほどのコインが。



『うぉ!何、くれんのか!?』


「え…

…う、うん…」



『サンキュー!』



そう言って袋を受け取った吾郎だったが、薫の表情が曇ったのを見逃さなかった。



そして薫と袋を交互に見比べ、袋から半分ほどコインを出したかと思うと、袋を薫に返した。


「え…」



『ったく、一緒に行きたいなら行きたいって素直に言えよな』


吾郎の言葉に、薫はすぐに頬を染めた。



「だ、だれがあんたなんかと…!」



『ハイハイ、わかったわかった。』



「…むかつく…」




軽口を叩きながらも、仲良くバッティングセンターへ向かう二人であった。








END